絶望への賛歌
馬の蹄が地面を打つ音ばかりが耳を支配する。
索敵陣形は今のところ順調に機能しているのか、巨人がここ中央後方まで侵入して来る気配はない。
遠くで進路変更の煙弾が上がるのを受け、リヴァイの指示でオルオが同じ緑の煙弾を撃つ。
すると右方から兵がやってきた。
「口頭伝達です!!右翼索敵壊滅的打撃!!右翼索敵一部機能せず!!以上の伝達を左に回してください!!」
やはりタダではいかないようだ。
ぺトラが左方に伝えるために班から離れる。
その途端、右翼後方から黒の煙弾が上がった。
「黒の煙弾!?奇行種が!?」
結構近いな・・・。
あっちの索敵はほぼ壊滅か?
「エレン。お前が撃て」
「ハイ!」
さて、敵も味方もどう出るか・・・。
「兵長!!リヴァイ兵長!!」
「・・・なんだ」
巨大樹の森。
その名の通りデカい木々が群生する地に、陣形の中央列のみ侵入した。
途端エレンが騒ぎ出す。
「何だって・・・ここ森ですよ!?中列だけこんなに森の中に入ってたら巨人の接近に気付けません!右から何か来てるみたいですし・・・。どうやって巨人を回避したり、荷馬車班を守ったりするんですか?」
「いやいやエレン。普通に考えてみろ。どうやったってもうそんな事無理だろ」
「え!?な!?・・・なぜそんな・・・」
「周りをよく見てみろ。この無駄にクソデカい木を・・・。立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。そして考えろ。お前のその大したことない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ」
なんてリヴァイは言ってるが、座学が苦手でない他の班員も焦ったような表情をしているのにエレン分かるはずないだろうな。
その瞬間、
ドオオオン
大きな音が後方から響く。
「!?」
「な・・・何の音・・・!?」
「すぐ後ろからだ!!」
「右から来ていたという何かか・・・?」
ざわめく班員たちを横目にリヴァイが剣を掴む。
「お前ら剣を抜け。それが姿を現すとしたら」
ズドンと足踏みと共に現れたのは15メートルはあるだろう女型。
「一瞬だ」