まだ君が生きているから
「おいおい、ひでえなこれは・・・」
泣き叫ぶハンジを遠目に、立ち上る煙を見つめる。
数日前のトロスト区奪還作戦の際捕まえた二体の巨人はハンジが生態調査を担当していた。
巨人に対して変態的ともとれる探究心から可愛がっていた奴らが何者かに殺された。
だからああして哀しみに咽び泣いているらしい。
それにしても、
「被験体を殺す、か」
俺の呟きにリヴァイはこちらに一瞬だけ目を寄越して身を翻した。
「ギル、行くぞ・・・。後は憲兵団の仕事だ」
「おー」
間延びした返事を返すと、エルヴィンがそこに現れた。
「エレン」
「団長!これは一体?」
エルヴィンはそう聞いたエレンの肩に後ろから手を添える。
「君には何が見える?敵は何だと思う?」
「・・・はい?」
果たして本当に考えが行き着いてないのか、ハンジの餌食となったせいで寝不足で頭が回っていないのか。
その返答を受けてエルヴィンは手を離した。
「すまない・・・。変なことを聞いたな」
この出来事が指し示す事実は、一つしかないというのに。
その後何事もなく新兵勧誘式も終わり、無許可で立体機動装置を使い被験体を殺したと思われる兵も見つからなかった。
そんな中、とうとう壁外調査が始まろうとしていた。
「付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!」
壁の上の兵士から叫びを聞いて、前方の兵士が鼓舞の声を上げる。
「いよいよだ!!これより人類はまた一歩前進する!!お前たちの訓練の成果を見せてくれ!!」
それに呼応するように兵達が剣や腕を掲げる。
そしてエルヴィンの号令で一斉に馬を走らせた。
「第57回壁外調査を開始する!!前進せよ!!」