愛する人なら、なおさら
なんとか必要な場所の掃除が終わったころには日が傾いていた。
食堂でコーヒーを啜りながら情報交換や談話をした後、現れたハンジにエレンという生贄を残して他の団員はさっさと自室に帰って行った。
夜の静寂に包まれた廊下をリヴァイと共に歩く。
「っていう話をしたら見事にエレンに勘違いされた」
「・・・様子見させに行ったのに何で平然と無駄話してやがる」
「それは新兵のエレンを寄越したお前のミスだろ」
昼間の話をリヴァイにしてやると見事気分を害したように眉根を寄せた。
一体何に対する怒りなのか思い当たる節が多くて完全には特定できないが、左程本気で怒っている訳でもないのでスルーしておく。
「それよりお前、よくそんなことをベラベラと・・・」
「ん?・・・子供には不味かったか?」
今更ながらに思い出してみればエレンは確か15だったか。
あの昼の会話からして恋愛事には疎そうだったが。
「まあ、いいんじゃねえの。リヴァイと俺が世間一般的に言う”恋人同士”であることは違いないんだし」
俺の言葉にリヴァイはただため息をつく。
そんな話をしながら歩いていたら宛がわれた部屋にたどり着いた。
手前が俺で、その奥がリヴァイの部屋だ。
そこでリヴァイの手を握って手前の部屋を通り過ぎると「オイ」と声がかかる。
「部屋掃除しただろ?」
「お前もだろうが」
「確実にリヴァイの部屋のが綺麗だと思うけど?」
潔癖症のリヴァイがどっちを選んでどう気分にさせるかはもうこの長い付き合いで随分学んだ。
どうする?という意味を込めて顔をぐっと近づけると、二度目のため息と一緒に、
「汚すなよ」
とお言葉をいただいた。
「いっつも思うけどそれってかなり難しくないか」
「じゃあ盛るな」
「それも無理だろ、お互い男だし」
軽口を叩きながらリヴァイの部屋へと入る。
こんなことをする相手を仲間だなんて呼ぶはずないだろう?