答えなど皆無



「お、」

ふと影がちらついて窓に顔を向けると、見慣れた鳥がとまっていた。
鳥は忙しなく首を動かしながら小さく鳴いている。

「ジュード!」

奥の備品が置いてある部屋に声をかければ、小走りで駆けてくる音が聞こえる。
そんなに慌てなくてもいいのにな。

「何かあった?」
「ん」

親指で窓辺を指すとジュードは鳥の存在に気付いて顔を綻ばせた。
あの鳥は定期的にジュードの元にやってきていた。
何でも一緒に旅をしていた仲間からの手紙を運んできていて、ジュードがまたそれに返事を書き飛ばす。
リーゼ・マクシアにはまだGHSが浸透していない事実をここで窺うことができた。

「あ、」

小さく放たれた声にどうしたと視線を向けると手に持ったペンを見つめていた。

「インクが切れちゃって」
「・・・ほら」

胸ポケットに差していたペンを抜いて渡してやる。
ジュードが掴んだと思った瞬間、指先が軽く触れペンが軽い音を立てて床に落ちた。

「ご、ごめん!」
「いや、ペンくらい大丈夫」

慌ててペンを拾うジュードの耳が赤いことに気付いたが、どうしてなったのかは分からない。
鳥が俺の気持ちを表したように首を傾げた。








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