僕が探していたもの



「明日はバランと外に出るから」
「分かった。じゃあ明日は自分の方を進めるね」
「ああ」

白衣を脱いでソファに適当に放り、テレビの電源を入れる。
もう深夜近い時間だ。今日は研究室に少し長くいすぎたか。
あれから俺がそう進言したからか、ジュードは自分の研究を始めた。
とは言っても源霊匣の研究をしているのには変わりないからそう離れた分野ではない。
俺の研究データを見て問題になりそうなところの潰しこみに力を入れていようだ。

「そういえば」
「?」
「断界殻を壊したのってお前だったんだな」

今日バランと話していて知ったことだ。
アイツの行方不明だった従兄弟が見つかったのは聞いていたが、その従兄弟も断界殻破壊に一枚噛んでいるとか。
ジュードに視線を戻せば気まずそうに視線を落としている。

「うん、そうなんだ・・・」

いつかは話そうと思ってたんだけど、と気落ちしているジュードに首を傾げる。
何を落ち込むことがあるんだろうか。
俺はただ雑談のつもりだったけど彼にとっては違うのか。
それは悪いことをしたかもしれない。

「まあ、そのお蔭で俺は助かっているんだが」
「え?」

ジュードが驚いたように目を見開く。

「正直研究に行き詰っててな、いくら研究に協力してくれるリーゼ・マクシア人がいるからって毎回同じ結果のデータじゃ研究にならないだろ?そんな中断界殻が壊されて人が行き来するようになった。エレンピオス人を嫌悪するリーゼ・マクシア人も多いだろうけど、それでも前と今じゃ全然環境が違う。俺の研究は確実に前に進んでるんだ」

だから助かったよ。
そう言えばジュードは眉尻を下げて良かった、と呟くように零した。

「今日は外に食いに行くぞ」
「え、今から?」
「ああ、この時間でもやってる店はあるからな」

上着を羽織り、財布を掴んで呆けているジュードを振り向く。

「行かないのか?」
「い、行く!」

ばたばたと自室に駆け込むジュードは見ていて面白い。
思わず笑みがこぼれた気がした。








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