視線の交差点



 
「すみません。なんか・・・」

部屋へ向かう途中、急にジュードから謝りの言葉がかけられた。

「いや、謝るのはこっちのほうだろ。バランのヤツが悪かったな」
「いえ、確認しなかった僕も悪いですから」

ジュードは幼いながらに礼儀がしっかりしているようだ。
しかしそれゆえに気苦労が絶えなさそうでもある、と研究者気質に分析してしまう。

「そういえば、歳は?」
「今年で16です」
「じゅ、」

16とは・・・やっぱり一回りも違うのか。
なんだか自分が一気に老けた気になってしまう。

「なまえ博士は?」
「博士なんてつけなくていい。ここの研究者たちは昔から知ってるヤツらばかりでそう呼ばれ慣れてないからな」
「でも・・・」
「呼び捨てで呼んで怒るヤツなんかいない。俺は別に気にしてないから敬語もやめたければやめてくれ」
「は、・・・うん。ありがとう」

ジュードの前を歩いているためどんな表情をしているかは分からないが、声はどこか嬉しそうだ。

「歳は27」
「えっ?」
「?何だよ」
「いや、もっと若いと思ってたから」

老けていると見られるよりはだいぶいいが、一体いくつに見えるんだろうか。

「背も高くて羨ましいよ」
「まだ16なんだ。お前もそのうち伸びるだろ」

そんなことを話していると部屋の前に到着した。
ドアの横のパネルにパスワードを打ち込んでロックを外し中に入る。

「わあ、広い・・・!」
「もともとシェアができるように建てられたトコだからな。リビングがあって部屋も二つある」

しかしこれまた問題があった。

「けど部屋が空いてないんだ。寝室と片方は書類や本で埋まってるから」
「ソファーを貸してくれれば平気だよ。今日一日だけだし・・・」
「悪いな」

ううん、と首を横に振るジュードになんだか感動を覚える。
人の事を言えた義理ではないが、ここの研究者たちはいささか性格に難ありのヤツが多いためジュードのように礼儀正しい人間を見ると少し心が洗われるような気さえする。

「まあ適当にくつろいでくれ」

そう声をかけてコーヒーを入れるためにキッチンに向かった。








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