今、この腕の中にある



 
「なまえ、どう思う?」
「ん?」

ふと顔を上げると呆れた顔でこっちを見ているジュードがいた。
初めて会ったときのことを思い出すつもりが、思いの通じたときのことまで思い出してしまうのは仕方ないと思う。

「もう、また飛んでたでしょ。考え始めるとすぐ他が手につかなくなるんだから」
「悪い悪い」
「本当に思ってる?」
「勿論」

ちゅ、と軽い音を立ててキスをするとジュードは顔を赤くさせて怒る。

「絶対思ってないでしょ!」
「思ってるって。ただそれとキスしたいことは別だろ?」

ただこれは怒ってる訳じゃなく照れ隠しだと知っているから正直あまり反省の意はない。
なんて言ったら本当に怒られそうだから言わないが。

「っと、そろそろ時間だ」
「ああ、アスコルドのセレモニーに行くんだったな」
「そう、幼馴染がどうしてもってね・・・」

支度を始めたジュードの腕を引いて今度は額に唇を落とす。

「気をつけて」
「うん、行ってきます」



好きなことが少なくなって、嫌いなことがたくさん増えた。
夢を見ているような感覚にさえなるときもある。
でもそれは、ただ愛して愛されたい事だと知った。


これからもこの眩むような病熱は俺を蝕むのだろう。







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