曖昧になっていく私たち



 
食器を洗うジュードをソファに座ってぼんやりと眺める。
バランと話をしてからは体調もずいぶん良くなったが、自覚してからもそれはそれで大変なものだ。
やたらとその行動を目で追いかけてしまうし、世話を焼きたくなる。
こうして長い時間見ていても飽きない。不思議なことだ。

「なまえ?先にシャワー使うよ?」
「ああ」

シャワールームに向かうジュードを見届けて興味もない番組を放映しているテレビを見る。
近いのに遠い。
ふとそう思った。










シャワーから上がるといつかの日のようにジュードがソファで寝ていた。
今度は本を広げたままだ。
ただあの時とは違って起こすのを忍びなく思い、テレビを切って本に栞替わりのメモ紙を挟んで、ジュードの膝裏に腕を入れて抱き上げた。
そのままジュードの部屋に入りベッドに降ろしてやる。
あどけない寝顔は彼の歳相応に見え、改めて一回りも年下であることを思い出させた。
その黒髪に指を絡めてみるが起きる気配はない。
そのまま指の背で頬を撫でる。

それは自分以外の誰かに体を動かされたような感覚だった。

気付けばジュードの頭の横に手をついて、彼の唇にあと少しで触れそうな距離にいた。
ゆっくりと体を起こし、手で顔を覆う。
いくらなんでも寝込みを襲うような真似は、な。
これ以上おかしなことが起こらないよう、名残惜しいながらもジュードの部屋を出る。

俺はその病熱を抑えるのに必死だったから、後ろの衣擦れた音には気付けなかったんだ。









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