心を乱す不協和音



 
それは唐突に起きた。

たまたま研究室から出ていて部屋に戻ると、ジュードやバランの他に一人の男がいた。
バランがこっちに気付いて手招く。

「なまえ、彼が僕の従兄弟だよ。前に話しただろ?」
「ああ・・・」

あの断界殻を破った1人で、アルクノアだったっていう・・・。

「アルヴィンだ。おたくがなまえか、ジュードとバランから話は聞いてるぜ?」
「話?」
「怖〜い先輩がいるってな」
「ちょっとアルヴィン!僕そんなこと書いてないでしょ!」
「冗談だよ、冗談」

やれやれと両手を開いて見せるその仕草は確かにバランに似ている気がする。
しかしこんな何もないところに何をしに来たんだか。

「俺は商人をやっててね。商談がこの近くであったから顔を見せに来たんだ」
「へえ・・・」

心を読んだのかと問いたくなるほどのタイミングでその答えが返ってきた。

「ていうかアルヴィン、ここにいて大丈夫なの?ユルゲンスさん待たせてるんじゃない?」
「何だよつれねえなージュード君は」

アルヴィンがジュードの首に腕をかける。


「     」


瞬間何かが口からこぼれそうになり、しかしそれは声にも音にもならなかった。
一瞬意識が飛んだようにも思える。
ここ最近の疲れがキているのか・・・?

「なまえ?顔色悪いけど、大丈夫?」
「・・・ああ」

ジュードが心配そうに顔を覗き込んできた。
なぜかその目を直視できず視線を逸らす。

「・・・悪い、部屋で休む」

視線から逃れるように部屋を後にした。
閉まった扉の向こうでバランが楽しそうに笑っていることなんて知らずに。









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