兄のズルいトコ


 
「リヒト?」
「ん?」
「寝ないの?」

僕の問いにリヒトは目を細めて笑う。
するすると僕の頭を撫でて。

「寝つけないだけだ。もう寝ろ」

なんて言われれば目を閉じるしかない。
しかし目を閉じても髪に触れる手は止まらない。

こうして野営をしているときはいつもそうだ。
他の人が見張りをしているのにも係わらず、リヒトは僕より先に寝ることをしない。
ずっとこうして頭を撫でて、いつの間にか眠りにつかされている。
その理由を聞いてみてもはぐらかして教えてくれない。

ただ、リヒトが教えてくれないけどなんとなくその理由は想像できる。

リヒトは僕を守ろうとしているんだ。
今旅を一緒にしているみんなを信用はするけど信頼はしてない。
そのことについては本人の気次第だからどうすることもできないことで。
こんなことを言うのは何だけど、例えば今もしもここで魔物に襲われたとして、みんなで戦って勝てないと悟ったならリヒトは僕だけは何とか助けようとするだろう。
たとえ仲間を囮や犠牲にしてでも。

「・・・・・」

それで死んでしまっても、「僕が無事で良かった」なんて言うんだろうな。
その時ふと一瞬撫でていた手が止まって、すぐに再開された。

・・・こんなことを考えるのは止めよう。
僕が寝ないとリヒトも寝れないし、

きっとそんな状況になったら、僕もリヒトが無事で良かったなんて思うに決まってるんだから。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -