嘘をつけない距離


俺には双子の弟がいる。
目に入れても痛くない、というより愛している。もちろんそういう意味で。
相手もそれを享受しているし、何も問題ない。





「ジュード」
「リヒト、どうしたの?」

ジュードの首に抱き着けば慣れたように抱き留められる。
拳ひとつほどの距離で見つめれば「ああ」と気付いてくれたようだ。

「お腹すいたんだね。何か作るよ」
「ん。さんきゅ」

そう返して腕を離すと荷物を漁り始める。


「・・・・なあ」


横から声がかけられ、顔を向けるとアルヴィンが何とも言い難い表情でこっちを見ていた。

「おたくら、何で今ので伝わるわけ?」
「何でって・・・」
「俺とジュードだから伝わるんだよ」

ふん、と見下した態度にジュードが咎めるように名前を呼ぶが、直す気はない。
それを見越してかジュードは苦笑した。

「一卵性双生児には、こういうことがけっこうあるみたい」
「一卵性、双生児・・・ですか?」
「えっと・・・。もともと一つの命が、母胎で二つに別れて産まれてくることだよ。もとは同じだから性格とか好みも似やすいんだって」

ジュードの言葉にエリーゼとアルヴィンが固まる。

「性格は」
「どう考えても似てないだろ!」

確かに性格が似ていると言われたことはないが、失礼な奴らだ。
別に似ていようといまいと互いは互いだ。
遺伝子レベルで同一だろうが、”個”であることには変わりない。

じっとジュードを見つめるとすぐにジュードが気付いてこっちを見る。

「ごめん」
「いいよ。俺も手伝う」

持っている食材を奪ってすぐそばの水辺に向かう。
ジュードがすぐ追いかけてきた。

「何を作るんですか・・・?」
「リヒトがマーボーカレーを食べたいみたいだから、それにしようと思って」
「おたく、そんなこと言ってたか?」

アルヴィンの言葉にジュードが首を振る。

「そんなことまで分かんのかよ・・・」

ため息をつくアルヴィンとは対象にエリーゼは少し羨ましいとこぼしている。
確実に俺の中の株はアルヴィンよりエリーゼの方が高いな。

ふとジュードのほうを向くと、同じタイミングで視線が合う。
それに笑みを返して調理を再開した。








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