何もかもを知っている コツコツ、 発光する石のような素材でできた道をひたすらに進む。 今ここに一緒に旅をした奴らはひとりもいない。 この世精ノ途に入った際にウィンガルと戦い、最愛の弟もみんなもバラバラに逸れてしまったのだ。 「・・・・」 少し前に別れた弟の顔が頭から離れない。 この考えは、旅をしているうちに何度も過ったものだ。 俺たちはもう離れられないと理解しているのにどうしても消えてくれない。 「ジュード」 (苦しいんだ) 彼を守ろうとして自分の首が絞められても構わない。 俺には、お前だけなんだ。 「ガアアアッ!」 「っ!」 しまった。 魔物が後ろから襲ってくるのに気付けず、反応が遅れた。 咄嗟に腕で庇おうとした、その瞬間。 「魔神拳!!」 横からの攻撃に魔物はマナとなって消滅した。 ふっと腕の力を抜くと、慣れすぎた温もりに包まれる。 「リヒト・・・!!良かった・・・!」 「ジュード・・・」 「怪我はないよね?」 ペタペタと俺の体や顔を触りながら確認をするジュードはこっちが驚くくらい慌てており、思わず忙しなく動くその手を掴んだ。 「落ち着け。何ともないから」 「でも・・・」 ぐっと俯いたジュードはぽつぽつと小さな声でこぼす。 「ごめん、リヒト」 「ん?」 「旅の間中、ずっと迷惑かけっぱなしだった」 そんなこと、お前の無事に比べればなんてことはないのに。 俺の考えを見透かしたようにジュードは首を横に振る。 「僕が、・・・僕も、リヒトを助けなくちゃいけなかったんだ。自分のことばっかりで全然気付けなかった。甘えてたんだ、”兄”っていう存在に。でも」 澄んだ瞳が俺を飲み込む。 「リヒトが僕を守ってくれたように、僕もリヒトを守りたい。だからお願い。僕と、みんなと一緒に戦ってほしいんだ」 ああ、そういえばいつもそうだった。 ジュードを守ってやってるつもりがいつの間にかジュードに手を差し出されている。 だから俺たちは兄弟でもなく、家族でもなく、”個”としてお互いに離れられない。 |