ずっと昔の夢を見た


 
目の前の色という色が褪せて、その輪郭はところどころ歪んで見える。
これは夢だ。
ずっと昔、物心ついて少ししたころのル・ロンドの風景。
そしてバタバタと俺のすぐ横を少女か駆けて行く。

『ジュード!リヒト!はやく!』
『ま、まってよレイア・・・!』
『そんなにはしるところぶぞ』

その後を追うように一人の少年が駆けて行き、もう一人の少年が歩いて行った。
あれは、過去の俺たちだ。
そう認識した瞬間、景色が分からなくなるほど歪んで、再びどこかを映し出す。
ここは家だ。
締め切った診察室の扉の前に幼い自分が立っている。
中からはこれ以上ないくらい慌ただしい声が響き、それをどこか無心に聞いているのだ。
やがてふらりと動きだし、二階の自室へと戻っていく。
部屋の隅ではジュードがぼろぼろと止まらない涙に溺れていた。

『リヒト・・・、リヒト・・・』

それしか言葉を知らないように俺の名前ばかりを繰り返している。
リヒトはそんなジュードを強く抱き締めた。


(ああ・・・)


そういえばこの頃からレイアもジュードも俺も、早く”子供であること”から抜け出したくなったんだっけ。
レイアが黒匣で大怪我をした、あのときから。

目の前が真っ暗になる。

でもそう思っていたけど全然子供のままだった。
この旅をしてる間何度も現実を突きつけられて、押し付けたくなる痛みを何とか飲み込みながらやってきたんだ。
誰にも、誰かの痛みを肩代わりなんてできないから。
だから、


「大人になるさ」


それがどれだけ受け入れがたくともな。

そう呟くと、過去の俺は苦虫と噛んだように顔を歪ませた。






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