身を寄せ合う眠りに悪夢は見ない


 
金に余裕があるからと、全員個室で宿を取ることになった。
こういうことは初めてではなく、金銭の管理をしているローエンが言い出すことが多い。
ふと宿屋のカウンターに目をやるとあるものが目に入る。

「・・・俺とジュードは同じ部屋で寝る」
「はあ?」

俺の言葉に宿の主と話をしていたアルヴィンは眉根を寄せた。

「おいおい、今更か?今までこういう時、何も言わなかったじゃねえか」
「うるさい。店主、二部屋減らしてツインを一部屋増やしてくれ」

そんな態度にも店主は嫌な顔せずに請け負ってくれて助かった。
アルヴィンの呆れた声を無視してジュードの手を引いてさっさと部屋へと向かった。





「さっき、何であんなことしたの?」

ジュードの問いに上着を掛けてから振り返る。

「今日」
「・・・!」

今日は、亡くなってしまったジュードの先生であったハウス教授の誕生日なのだ。
だからどうした、と言われそうだが、ジュードがことあるごとに何かのきっかけで教授のことを思い出しては、夜に魘されているのを知っている。
昔にレイアが大怪我をしたときもそうだったし、俺と初めて喧嘩をしたときもそうだった。
感受性が強すぎて夢にまで出てきてしまうらしい。
ジュードは困ったように笑って、

「ありがと」

呟くようにこぼした。
その琥珀を覆う水の膜には気付かない振りをして。






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