二人だけの秘密 マナを使い果たし消滅しかけた。 世精ノ途で再び彼らと会うことができ、使命を果たす事ができる。 とても、嬉しかった。 だからという訳ではないし、とても遅くなってしまったかもしれないが、彼と話をしてみようと思ったのだ。 「・・・で?」 「うむ。だから話をしようと思ってな」 「何が”だから”なんだか・・・」 リヒトはベンチに座ったまま頭を項垂れた。 しかし困ったことに何から話せばよいか・・・。 そういえば、 「ずっと気になっていたのだが」 「何」 「そこまでジュードに固執するのは何故だ?」 何を言っているのか理解できない、とでも言いたげに眉根を寄せる。 ため息を一つついて口を開いた。 「何度も言ってるけど、大切だから」 「ああ、私の言い方が不適切だったか。大切なのは十分分かっているが・・・何か、きっかけみたいなものがあるのかと思ってな」 「・・・・・・」 リヒトはぐっと押し黙って話すかどうかを考えているようだ。 そうして少しの沈黙の後、重たい口を動かした。 「ジュードが物心ついたのは俺より少し遅いころだった。その時からお人よしともとれるような性格で、親が構わないせいでどんどんそれが悪化していったある日、ジュードが怪我をして帰ってきたんだ」 いわゆるいじめというものにあっていたんだが、怪我を負わされてもジュードは笑って”大丈夫”なんて言っていて思わずゾッとしたよ。 このままだと、殺されても”仕方ない”なんて言い出すんじゃないかってね。 「もちろんそんなことはないけど、”そういう感じ”がなくなったのは俺がジュードに構い倒すようになってからだ。・・・だからと言って俺は決して兄弟の義務や家族としての同情でやってるわけじゃない」 ジュードと同じ琥珀色の瞳が私の視線を射抜く。 「俺が俺であり、ジュードがジュードである限り続くんだよ。未来永劫にな」 思わずその眩しさに目を細める。 これは人間の道徳からすれば異端に相当するのだろう。 しかし、こんなに純粋で底の無い愛は他にはないのではないだろうか。 「・・・君と話せて良かったよ」 「・・・あっそ」 彼との間の蟠りが決して消えたわけではないが、それでもこの時間は必要だったと言える。 ジュードに呼ばれて離れていくリヒトの背を見て強くそう感じた。 |