ふと思った。 自分は『時の歌』によって『最初の朝』に戻るわけなのだが、自分がそれによっていなくなった世界はどうなるのだろうか。 『時の歌』が自分やチャットだけでなく世界にも作用しているのなら世界も"巻き戻って"いるのだろう。 しかし、もしそうでないとしたら。 『時の歌』が効かない、しかも月を止めることのできない世界は滅ぶだけだ。 そうだとしたらなまえやこの世界は自分が『時の歌』を吹く度に死んでしまうことになる。 でもなまえは今だって世界のどこかにいるし、世界に住む人々は同じ行動を繰り返しながらも"生きていた"。 「 」 ああ誰かが呼んでいる。 それとも俺が誰かを呼んでいるのか。 「 !」 きっとどっちも、だ。 俺たちは 逢 い た い と願って世界を巡ってきた。 「 !!」 お願いだから泣かないで。 その為なら俺は世界を越えるから。 「――リンク!!」 「…なまえ、」 目を開けると視界いっぱいになまえの泣きそうな顔と空。 あの不気味な月の姿はもうない。 いいやそんなことよりも。 「なまえ…」 名前を呼べばなまえは涙目で微笑んで、 「はじめましてリンク。…逢いたかった」 実は世界は滅んでいたんじゃないかとか、そのたびになまえが死んでしまってるんじゃないかとか、そんなことはどうでもよかったんだ。 だって今目の前になまえがいて、触れることができること、 「やっと逢えたね、…なまえ」 そしてなまえを力強く抱き締めることができる。 それがすべて。 堕ちた世界で生きる僕ら (これが僕らの輪廻の物語) |