「お母さん早く!」 日が落ちる頃。 なまえが町、というよりあの月から逃げるために家族を急かしている。 それを遠くから離れて見つめた。 もうすぐ、もうすぐであの月を止められる。 やがてなまえと母親が祖母の車椅子を押し、カーフェイを待つために残るアンジュに見守られながら町を出る――――はずだった。 「わたし、行かない」 「!?」 なまえはいつもと違う行動を起こした。 「なに言ってんだいなまえ!早くしないと…!」 「でも待たなきゃ!」 「誰を!」 「わかんない…!でも」 「なまえ、こっちへおいで」 母と娘の言い合いを止めたのは、なまえの祖母。 なまえはおとなしく近付いた。 「ここで、待つのかい?」 「うん」 「そうかい…。そこまで言うなら仕方ないね」 「おばあちゃん!」 「ほれ行くよ。ピクニックなんて久し振りだねえ…」 母親はなまえを見つめた。 「まったく誰に似たんだろうね、その強情さは」 そしてなまえの頭を一撫ですると、「気を付けなさいよ」と町を出て行った。 アンジュがなまえの肩に手を添える。 二人は顔を見合わせて困ったように笑った。 「中に入ろう?」 アンジュの言葉になまえはゆるゆると首を横に振る。 「探さなきゃ、わたし」 「探すって…、誰か分からないんでしょう?」 なまえはうつむく。 「うん。でも――――」 その瞬間、 「!!」 顔を上げたなまえがこっちを見て一瞬、視線が交わる。 俺は迷わず時計塔へ走って逃げた。 走りながら想う。 (なんで) (なんでなんでなんで) (なまえ…!) でもいつもと違う"それ"は、この循環の終わりと一筋の奇跡を示唆している気がした。 世界はキミが思うほど残酷ではない (なまえ)(リンク…?) |