ふと思った。
自分は『時の歌』によって『最初の朝』に戻るわけなのだが、自分がそれによっていなくなった世界はどうなるのだろうか。
『時の歌』が自分やチャットだけでなく世界にも作用しているのなら世界も"巻き戻って"いるのだろう。

しかし、もしそうでないとしたら。

『時の歌』が効かない、しかも月を止めることのできない世界は滅ぶだけだ。
そうだとしたらなまえやこの世界は自分が『時の歌』を吹く度に死んでしまうことになる。

でもなまえはこうして今も俺の隣にいるし、世界に住む人々は同じ行動を繰り返しながらも"生きている"。



「リンク」

名前を呼ばれて顔をあげれば、なまえが心配そうな顔で覗き込んできた。

「どうしたの?大丈夫?」
「うん、何でもないよ」

そう返したらなまえは更に眉尻を下げる。


「でもリンク、泣いてる」
「え」


下を向くと、服や床にいくつもの染みがあり、気付かないうちに泣いていた。
しかも目からこぼれる涙は止まることを知らないのか、俺を枯らそうとしているらしい。

「リンク」

なまえにぎゅう、と抱き締められた。
まだ涙が止まる気配はない。
けどなまえがいる限り、俺が枯れることはないのだろう。
不思議とそう思えた。

「なまえ」
「リンク」

抱き締め返せば愛しい声が返ってくる。
なまえは決して「泣かないで」とは言わなかった。















(あなたは優しすぎる)(きみは優しすぎた)



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