「1対1な。ちなみにこいつはピカチュウっていって電気タイプのポケモンだ」
少年は訝しげな表情をしている。
タイプまで相手に教えて何を考えてるんだって思ってるな。
「少年はどんなポケモンでもいい。電気が通じない地面タイプが相手だって俺たちは勝つ自信がある」
「馬鹿にしやがって・・・!!」
「してないさ。ただ少年のポケモンバトルの認識を変えたいだけ」
少年は話を聞いているのかいないのか、ボールから出てきたのはワニのようなポケモン。
ワルビル、だったかな。
「電気が地面に勝てるわけない!ワルビル、かみつく!」
「かげぶんしん!」
がぶりとワルビルが噛みついたのは偽物だ。
ワルビルは分身したたくさんのピカチュウに戸惑っている。
「っ・・じならしだ!」
じならし?
聞いたことのない技名だがおそらく地面タイプの技だろう。
ゴゴッ
地面が振動してピカチュウが少しよろめいている。
なるほど、素早さを抑える技か。
「ピカチュウでんこうせっか」
「ぴっかぁ!」
ピカチュウのでんこうせっかでワルビルは少し飛ばされる。
「アイアンテール!」
そして体制を整える前にアイアンテールで地面に叩きつけた。
土煙が晴れて見えたのは目を回したワルビルだった。
ピカチュウが俺に飛びついてきたので抱き留める。
少年は呆然としていた。
「少年」
呼ぶと少年はびくりと肩を揺らした。
「ポケモンにとって、トレーナーの言うことを聞いて戦うってことはなんのメリットもないんだ。それでもポケモンは言うことを聞いてくれる。なんでだと思う?」
「・・・・・」
「俺は、友達みたいなもんだと思ってる」
ピカチュウが俺の顔に頬を寄せる。
「友達だから、頼みを聞いてくれるんだ。だからバトルが成立するんだよ」
「ぴっか!」
少年は俯いたまま足元のポケモンを見た。
ボロボロなまま、それでも少年を心配して気遣うように鳴く。
そんな姿にやっと気付いたのか、少年も小さく「ごめん」と呟いた。
そのマントは飛ぶためにあるんだってね
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