コール・ミー
ピリリリ…
耳元に当てたポケギアから電子音が響く。
しばらくして、
『もしもし?』
「あ、…」
聞きたかった声が鼓膜を震わすが、つい言葉につまってしまった。
グリーンはくすくすと機嫌の良さそうな声で笑う。
『あ、ってなんだよ』
「……うっさい」
小さな声で悪態をついても笑い声はやまない。
無意識に唇を尖らせる。
『で?』
「…なに?」
『何か用でもあったのか?』
「別にー? ただ、声が聞きたかっただけ」
『…!』
息を呑む音にしてやったとほくそ笑む。
しかしなかなかグリーンからの応答がない。
「ちょっと?」
『あ、ああ』
「なに固まってんの!」
『いや、だってお前……明日は槍でも降るか?』
「しっつれいな!!」
『はははっ』
グリーンの笑い声を聞きながらベランダに出ると、夜のひんやりとした空気に一瞬眉根を寄せる。
「ね、今そと?」
『いや、家ん中』
「じゃあ外見てよ」
『どっこらしょ』なんて言いながらカーテンを開ける音が電話ごしに聞こえた。
「何が見える?」
『あ?普通にレッドん家と森と…空に星と月しかねえけど』
「…そ」
グリーンは訝しげな様子だが、私はその答えに自分でもよく分かるほど上機嫌だった。
『なんかあるのか?』
「なんでもない!あ、そう言えばこの前さー…」
コール・ミー
(会えない夜は)(同じ月を見てお電話しましょ?)
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