空の境界




バサッ

遥か図上で羽ばたくポッポの群れを見上げる。
ここからだと尚更そう見えるが、ほんとうに体が小さい。
しかしやがては人をゆうに越える大きさのピジョットになるのだから不思議だ。

なんて思っていたらふとグリーンの姿が思い浮かんだ。
おそらく彼のピジョットに何回か乗せてもらったことがあるからだろう。
あまり遠くまで行ったことはないが、ピジョットの背から見える景色が好きだ。

(思い出したら乗りたくなってきた…!)

しかしグリーンはいまやトキワのジムリーダー。
マサラに帰ってくるのすら稀になってしまったのにそんな都合良く


「なまえ!」

「え?」


バサリ、音をたてて目の前に降り立ったのはピジョットとそれに跨がるグリーン。
なんというタイミング。
まるで私の考えが伝わったかのようだ。

「久しぶりだなー」なんて言いながらグリーンはピジョットから降りて近付いてくる。

「ねえ!!」
「うおっ!なんだよ」

詰め寄るとグリーンは反射的に後ろに下がる。
すかさず逃がさないようにグリーンの上着を掴んだ。

「ピジョット、乗せて!」















ビュウビュウと少し冷たい風が顔に突き刺さる。
対称的にしがみついているグリーンの背中は暖かい。
風に負けないように必死に目をあけ、広がる景色を焼き付ける。

「そんなに乗りたかったわけ?」

グリーンが少し顔を振り向けて言った。
風が強いので少し大きな声で。

「うん」
「なんでだよ?」
「なんでって、グリーンの…」

あれ。
私、グリーンのことを考えてたら乗りたくなった?

「俺の?」

そのことに気が付くと何だか恥ずかしくなって、グリーンの腰に回した腕に思わず力を込めた。

「なまえ?」
「な、なんでもない!」

グリーンから抗議の声が聞こえたけれど、聞こえないふりをして背中に顔をうずめた。

私はどうやら景色ではなく、この温もりに触れたかっただけらしい。





空の境界





(このままずっと空の上で二人でいれたら)(きっとしあわせで死ねるのに)


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