「はあ、はあっ」

女神像までの階段を小走りでのぼる。
約束された時間には余裕があったけど、今日は特別。
だって今日は、リンクが鳥乗りの儀に参加する日だ。









「ゼルダ!」

女神像の前にはすでにゼルダがいた。
声に気付いて振り返る。

「ティエラ!」
「わあ…それが今日の鳥乗りの儀の衣装?」
「そうなの!どう?似合ってる?」
「うん、とっても!」

微笑むゼルダは同じ女である私から見ても可愛い。
器量も良くて、私とは大違いだ。

「ねえティエラ、手を出して?」
「うん」

にこにこと嬉しそうに笑うゼルダの言う通りに手を出す。
するとぱさりと何かが手に置かれた。

「これ・・・」
「そう!今日の儀式で使うショールよ。それはティエラの分」
「え?私、儀式には出ないよ?」
「だからよ。ティエラには特別!大丈夫、儀式で使う分はちゃんとあるから」
「あ、ありがとうゼルダ!」

ゼルダと笑いあっていると、さっき私が来た方向から足音が聞こえてくる。
視界に映ったのは見慣れた金髪。

「おはよう、リンク」
「おはよう」
「おはよう。ゼルダ、ティエラ」

リンクは笑いながら近づいてきた。

「わたしのロフトバードはちゃんとリンクを起こした?約束・・・忘れてたんでしょう?」
「リンクったら、ほんとにお寝坊さんなんだから」
「はは・・・」

苦笑いをこぼしたリンクに、私もまた笑う。

「ねえ見てわたしの服とこの楽器!今日の鳥乗りの儀式で使う女神様役の装具なの!」
「へえ・・・」
「すごいでしょ?特にこの楽器!伝説の女神様がこれと同じものを持っていたらしいの。それにこの衣装もステキでしょう?肩のショールはわたしが作ったの。ハープと衣装で今日のわたしは伝説の女神様!二人に見て欲しくて来てもらったの!ティエラには感想をもらったけど、ねえリンク、似合ってる?」

くるりと回ったゼルダにリンクは笑った。

「うん、よく似合ってるよ」
「うふふ、そうでしょ?ありがとうリンク」

小さいころから変わらない、3人で笑い合うこの時間が私は好き。
そんな時、後ろから声がかかる。

「ゼルダ、儀式の準備はもう済んだのか?」
「あ・・・お父様」

やって来たのはゼルダのお父さんのゲポラさんだった。

「おお、リンクとティエラも来ておったか。・・・さすがの寝坊助も今日ばかりはきちんと起きられたという訳だ」

ゲポラに言われ、リンクはまた苦笑いをこぼした。

「お前が今日の鳥乗りの儀で優勝すれば、女神様役のゼルダと共に儀式に参加できる・・・がんばるのだな」
「それなんだけど・・・お父様、聞いて!」

突然のゼルダの剣幕にリンクも私も驚く。

「リンクったら最近ほとんど鳥乗りの練習をしていないのよ!?たまにロフトバードに乗ってもぼんやり飛んでいるだけだし・・・素早く機敏に鳥を操れないと優勝なんて出来ないのに」

ゼルダに睨まれ、リンクは視線を泳がせた。
そんな二人に私は口も挟めずオロオロする。

「まあそう怒るなゼルダ。ティエラも困っているだろう」

そう言われ、慌てて首を横に振るとゲポラさんは笑った。

「鳥乗りの儀は人と鳥との絆や技量が試される場・・・お前の言うように簡単には優勝など出来ん。確かにリンクは普段あまり真面目に練習してはおらんようだが・・・、幼き頃からずっと見ているお前たちにもわかっておるだろう。リンク・・・そして共におるあのロフトバードの特別な結びつきを」

ゲポラさんが空を見上げるのに倣って私たちも顔を上げる。

「・・・我々スカイロフトの民には必ず己と対になる鳥がおる。それは皆が女神様からの御加護である守護鳥を・・・ロフトバードを授かるがゆえよ。この女神像の前で皆が幼き頃に一人ひとり、それぞれの鳥と出逢うが・・・リンクには他の者とは異なるところがあった。それは・・・リンクのもとに来たロフトバードが非常に珍しい・・・絶滅したはずの紅族であったという事」

リンクは照れたように頭をかいた。

「リンクとあの紅き鳥は不可思議な縁で結ばれておる。ゼルダにティエラ、お前達は覚えておるかの?幼き頃出逢ったばかりのリンク達を」

私は小さく頷く。

「リンク、練習してないのにすごく上手にロフトバードに乗っていたもの」

ゲポラさんも思い出すように頷いた。
その時、空を見上げていたリンクは何かに気付いたように首を傾る。

「どうしたの?リンク」
「うーん・・・」
「まあ、変わった人生を歩む者には必ず付いて回る、やっかみというものよ」

言葉を濁すリンクに問いかけようとしたけど、ゲポラさんの話に掻き消される。

「もう、お父様笑ってる場合じゃないわ!今日の鳥乗りの儀は騎士学校の課題試験をかねているのよ?鳥乗りの儀に・・・試験に真面目に参加しなかったら評価だってしてもらえない・・・。そうなったらリンク・・・騎士になれないのよ!?」
「わかったわかった、少し落ち着きなさいゼルダ。まったくお前はいつもリンクの事となると・・・」

俯くゼルダに私はリンクと顔を見合わせた。

「リンク!とにかく少しでも練習しておきましょう!こっちに来て、さあ!」

ゼルダはリンクをぐいぐいと引っ張って歩き出す。
私もゲポラさんもゼルダの行動力に驚くばかりだ。






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