学校を出て女神像の島の方へ走り、崖を降りたり上ったりしながら辿り着いた場所は。

「女神像・・・?」

女神像の前だった。
さらに人影が吸い込まれるように消えた場所に入り口が現れる。

「こんなところに入り口が・・・」
「・・・」

ためらう私とは対照的に、リンクはしっかりした足取りで中へ入っていった。





中には祭壇のようなものがあり、人工的に造られたことがわかる。
部屋の中央の台座には一振りの青い剣が刺さっていた。
リンクが一歩、剣に近づくとその青い剣が光り先ほどの青い子供の姿になった。

『お待ち申し上げていました・・・。我が創造主より選ばれし運命のお方・・・』

その声は頭の中に響いた。

『ファイ。・・・それがワタシに与えられし名。時の向こう・・・遥かな過去から大いなる使命を背負いしあなたの為に・・・、ファイはその為だけに作られた存在なのです。どうぞ、この剣をその手に・・・。我が創造主に選ばれしお方、リンク』

ファイは振り返り、剣を見やる。
しかしリンクは訝しげな表情のまま動かない。

『・・・不可解な夢、ワタシという突然の存在、親しい人物の安否が知れない状況。現状を分析すれば、あなたのその反応も無理はありません』
「・・・・・」

何故知っているのか。
そう言わんばかりにリンクはファイを睨んでいる。

『ではファイから進言を致しましょう。この助言はあなたの気持ちを変化させる可能性の高いものです』
「え・・・?」

『あなたの探すお方・・・ゼルダ様の命は失われていません』

「!!」
「ゼルダが・・・?!」
『あの巫女も・・・ゼルダ様もあなた方と同じく、大いなる使命を託されし定めのお方・・・。故にあなたが巫女との再会を望まれるならば・・・あなたはこの剣を手にするべきです。いかがですか?お気持ちに変化は?』

リンクは先ほどよりも幾分か表情が険しくなくなっていた。
ゼルダのことを問いただそうと思ったのか、リンクはファイに走り寄る。
しかしファイは逃れるようにふわりと頭上に浮いた。

『これ以上の言葉は不要と判断します。どうか我が創造主の命に従い、その手で剣を抜き、天にかかげて下さい・・・』

リンクは少し逡巡した後、剣の柄を握る。

「リンク!」
「大丈夫だよ、ティエラ」

(違う、違うの。)

分からないけれど、リンクが何か大きなものに飲み込まれてしまうような・・・。
とても、遠くへ行ってしまう気がするの。
けれど言いたいのに口から言葉にならず、代わりにぽろぽろと涙が零れる。

「大丈夫」

リンクはそんな私の頭を左手で撫でる。
その手つきはまるであやすようで、私は嬉しいけれど恥ずかしくなった。

「リンクが行く必要ない。私が、ゼルダを捜すから・・・!」
「なら、なおさら行かなくちゃ。ゼルダもそうだけど、ティエラのことも心配だから」
「でも・・・」
「それなら、一緒にゼルダを捜そう?」

ね?と微笑まれ、私は何も言えなくなってしまった。
小さく頷くと、リンクは剣を引き抜いて、天にかかげた。
剣に、ほのかな光が宿る。

『・・・承認、完了しました。マイマスター、リンク』

リンクは光を帯びた剣を見つめ、私はその背中を眺めていた。




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