白いドレスを翻して、駆け抜けてゆく後ろ姿
そわそわ、そわそわ。
きっとこんな扉の前でうろうろしてたらルートには落ち着け!って怒られるだろうし、菊には優しくたしなめられるだろう。
でも居ても立ってもいられない。
本番まで見ちゃダメって言われたけど、どうしても気になっちゃう。
そうやって扉の前で何回目かの往復をすると、扉ががちゃりと開かれた。
「あら、フェリちゃん」
中から出てきたのはエリザベータさんだ。
いつもの格好じゃなくて、大人しめのドレスを着ている。
「ふふ、待ちきれなくて来ちゃったのね」
「うん!ダメって言われたんだけど、どうしても気になっちゃうんだー」
エリザベータさんは楽しそうに笑って扉から体を少しずらした。
「ヴェ?」
「見たいんでしょう?」
その言葉にオレは嬉しくなって、エリザベータさんにお礼を言って中に入る。
「あら、フェリシアーノ」
なまえはにこりと笑う。
白いドレスを纏ったなまえは、綺麗という言葉では足りないほど綺麗だ。
「ドレス姿を見て何もないの?」
「ヴェ!違うよ!綺麗を通り越すぐらい綺麗だよ!」
オレの言葉になまえは面白そうに笑った。
「ねえ」
「なに?」
「……ありがとう、フェリシアーノ」
ガチャ、と後ろで扉の開く音。
「そろそろ時間よ」
「ええ、エリザベータ」
なまえが足早に横を通り過ぎたのを慌てて振り返る。
「フェリちゃん、新郎なのに遅れちゃうわよ?」
「ヴェ!すぐ行くよ!」
少しだけ見えた横顔は、とても幸せそうに見えた気がした。