君の夢を見たのか、君に夢を見たのか、



「エスト!」

肩を揺さぶられてハッと目が覚める。
視界に映ったのは心配したような彼女の顔だった。

「どうしたの?こんなところで居眠りなんて」
「…何でもありません」

彼女の後ろに太陽の光を受けて輝く水面が見える。
どうやら湖で本を読むうちに眠ってしまったらしい。
そう言えば、今は何時だろうか。

「もうヴァニア先生の授業始まっちゃったよ?エスト、確か受けてたよね?」
「…………」

しまった。
よりにもよってあの古代種の魔女の授業を、事情はどうあれ蹴ることになってしまうなんて。
成績を大きく下げられることはないだろうが、しばらくその事で嫌味くらいは言われるだろう。

「……もしかして、疲れてる?」
「いえ…大丈夫です」

大丈夫だと言ったのに、彼女の顔は悲しげなものになった。

「もっとワガママ言えばいいのに」
「は?」
「言いたいこともやりたいことも、体に溜めすぎるとよくないよ」
「何を言って――」

ユリウスではないが、意味が分からない。
つまり、

「あなたは僕にどうしてほしいんですか…」
「うん!」

呆れたように言えば彼女は突然立ち上がり、僕の隣に腰を下ろして。

「ちょ…!?」

体を引っ張られ、彼女の膝に倒れ込んだ。

「何を…!」
「こうしたほうがぐっすり眠れるよ?」
「だから…!」
「次の授業前には起こしてあげるから」

無理矢理すぎる。
しかし体を押さえ付けられるので、抵抗するのを諦めた。
こうなってしまっては何を言っても無駄だろう。

「ふふ」

僕が大人しくなったことに機嫌を良くしたのか、彼女は優しい手つきで頭を撫でてくる。
その手の暖かさに、段々と先ほどの眠気が戻ってきた。

「……なまえ」
「ん?」
「ありがとう、ございます…」

目蓋を閉じる前に見えたのは、なまえの笑顔だった。




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