『おい…!来たぞ!』
『こっちだ!早く』
大きなスクリーンに映された映像を黙って見つめる。
ちら、とグリーンを盗み見ると、真面目な顔で映画を見ている。
こんなにカッコいいのに俺が好きだなんてもったいないと思う。
「なまえ?」
「!」
ふいに目が合って小さく名前を呼ばれる。
「どうかしたか?」
「な、何でもない」
慌ててスクリーンに視線を戻したけれど、映画の内容はあまり頭に入って来なかった。
「そういえば、大丈夫なのか?」
「え?」
デートの帰り。
突然グリーンが話題を変えた。
「映画見てるとき。もしかして具合悪くなったのかと思ってさ」
あーやっぱりあんな見られてたら気になるよなあ。
「や、別に何でもないから大丈夫」
ひらひらと手を振って言うと、その手を掴まれた。
「ならよかった」
手を掴まれたまま、グリーンは進む。
まあ…暗いし、知り合いに会う確率も低いだろうと、その手を振りほどくことはしなかった。
「送ってくれてありがとな」
「おう」
もうすぐ家というところで手を離そうとしたら、逆に強く握られる。
「? グリ」
ちゅ
腕を引かれたかと思ったら、小さな音をたててそれは離れた。
ああ、グリーンの顔が赤い。
「じ、じゃあな」
俺が言葉を返すまえに、グリーンはさっさと帰ってしまった。
「……!」
ぶわっと時間をおいて顔が熱くなる。
しゃがみこんでしまいたい衝動をこらえ、手で口を押さえた。
(ちくしょう)
ほんとにイケメンだな!