「…………」
口端を引きつらせてコーヒーを淹れる。
ひらひらと動きに合わせて揺れるスカートが視界に入り不愉快な気持ちにさせた。
「なまえ。まだ眉間にしわ寄ってるぞ?」
ざわざわと話し声が聞こえる幕の向こうから、銀トレイを片手にグリーンが覗き込んできた。
眉間にしわが寄るのは当然だろう。
なにがおもしろくて、
「メイド服なんか着なきゃならないんだよ…!」
まあそれもこれも、クラスの馬鹿な男子どもと自分のくじ運のなさと、気の弱い文化祭実行委員が悪いのだ。
俺もグリーンみたいにウェイターの格好がよかった。
「………」
「…何だよ?」
グリーンがスカートの裾をくいくいと引っ張ってくる。
振り返ると、困ったような嬉しそうな、難しい表情をしている。
「なんかさ」
「?」
「やっぱりムラっとくるなと思って」
これはまずい。
瞬間的にそう思ってグリーンの手を掴もうとするより、スカートの中に手が侵入する方が早かった。
さらに抗議しようとすれば口が塞がれる。
「…っ」
思わず流されそうになって、後ろの台に手をつく。
さっき淹れていたコーヒーカップのカチャリという音にはっとして、グリーンの手を抓った。
「痛って!」
「こんなとこでするやつがいるか馬鹿やろう!」
「ちぇ、」
拗ねた顔をしたグリーンは呼ばれて表に戻っていった。
コーヒーはぬるくなっていて、淹れ直しかとため息をついた。