翌朝、支度をしているミラの背中に言葉をかける。
「聞いてもいいかしら」
「何だ?」
「ラフォート研究所で何を見たの?」
その問い掛けにミラはぴたりと動きを止める。
そして警戒するように立ち上がった。
「何が目的だ?」
真意を量ろうとミラは真っ直ぐな目で射ぬいてくる。
でも私も引くわけにはいかない。
私にも目的があり、なさなければいけないことがある。
「・・・私の目的を話すわ」
ミラの口から発せられたのは想像を絶する話だった。
ラ・シュガルはラフォート研究所で黒匣という兵器の人体実験を行っているらしい。
その兵器はクルスニクの槍と呼ばれ、人からマナを強制的に吸いとる。
何よりも赦せないのは、国が守るべき民をその兵器の人体実験の材料としていることだ。
(ナハティガル王・・・)
国の研究所で行っていることだ。
おそらく王が指揮を執っているに違いない。
改めてなさなければならないことへの決心を固くし、ミラに手を差し出す。
「私と、手を組んで欲しい。私のなすべきことのために」
ミラは差し出した手と私の顔を交互に見つめ、少し逡巡するように目を閉じたかと思うと手を握り返してきた。