03
 
船員が大きな声で案内するのを聞きながら船を降りる。
ここはイラート海停というところらしく、ア・ジュールの領地であるようだ。
あの時はとにかくイル・ファンから離れることしか考えていなかったため船の行先など気にしていなかったが、まさかいきなりア・ジュールに来てしまうなんて。
ただア・ジュールといってもラ・シュガルの港とそう変わり映えしないような印象を受けた。

「地図があるみたい。見てくるね」

そう言って駆けて行ったジュードは、無理やり笑顔を浮かべているように思える。
船ではだいぶ落ち込んだ様子を見せていたし、大丈夫だろうか。

「空元気、かねぇ」
「気持ちを切り替えたのか。見た目ほど幼くないのだな」
「おたくが巻き込んだんだろ?随分と他人事だな」
「確かに世話になった。だが、あれは本人の意思だぞ?私は再三帰れと言ったのに」
「それでも、あなたが巻き込んだんでしょ?」

口を挟むと、ミラが訝しげに視線を向けてくる。

「警告をしたのなら聞かない本人も悪いと思うけれど、そばにいることを許したミラにも少なからず責任があると思うわ」

ジュードとミラがどういう状況であったのかは分からないが、ミラはそっけなさすぎるしジュードははっきりしなさすぎている。
とはいえ他人の事ばかり考えていても仕方ないし、自分がこれからどうするか考えなくては。

ジュードの隣に立ち、同じように掲示板を見る。
一番近いのはハ・ミルという村で、大きな街となるとさらに何日もかけて北へ進まなければならないようだ。

「ここから北か・・・」

後から来たミラが地図を見て呟く。
すぐ発つのかという問いにミラはアルヴィンに剣の手ほどきをしてほしいと頼んでいる。

「おたくはこれからどうするんだ?」

アルヴィンに問われ、少し逡巡する。
ア・ジュールの大きな街に行きたいと思っていたのだが、ここから向かうには相当な道のりだし・・・先にあちらへ行った方がよさそうだ。
しかしもう船は出ない時間であるため、今日はここの宿に泊まるしかない。

「もう少し一緒にいていいかしら。目的地への船が明日にならないと出ないみたいだから」

その後、ミラとアルヴィンが剣の稽古をするのをジュードと眺めた。



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