稽古中、ミラが空腹で倒れたことにより宿で休むことになった。
しかし料理人が不在のため食事が用意できないと言われ、ジュードが厨房を借りて腕を振るってくれたのだった。
「へえ、こいつは美味い」
「本当ね。医学校では料理も習うものなの?」
「寮生活で自炊してたから。これくらい、慣れれば誰でもできるよ」
ジュードの謙遜にアルヴィンと否定しているとミラが満足げな表情で言葉をこぼす。
「人は、もっとこういうものを大切にすればよいのだ」
「・・・?」
ミラは食事が終わると机に突っ伏して眠ってしまった。
それにしてもミラはなんだか人間離れしたような言動をするが、一体何者なんだろうか。
すると今まさに疑問に思っていたことをアルヴィンがジュードに尋ねた。
「この娘、何者?」
「マクスウェルなんだって。二人とも、知ってる?」
「・・・マクスウェルだって?」
「それ、本当なの・・・?」
マクスウェル。
精霊の主と呼ばれ、四元素を操る太古の精霊だと言われている。
「そんなにすごい精霊なの?」
「ああ、信じられないよ。ガキの頃から枕許で、マクスウェルの話を聞いて育ったんだからな」
「そんなミラが壊そうとしてるものって何なんだろう・・・?」
ジュードの呟きにアルヴィンがさらに質問を投げかける。
「壊そうとしてるって?何を?」
「うん。確か、黒匣とか言ってたかな。研究所にあった装置」
研究所。
イル・ファンで研究所と言えば筆頭に名前が挙がるのはラフォート研究所だ。
そして兵に追われていたジュードたち。
まさか、
「もしかして、ラフォート研究所に入り込んだのって」
「それ、僕たちのことなんだ・・・」
フィオは驚きを隠せない表情で俯くジュードを見る。
「・・・・・」
アルヴィンとジュードの会話を聞きながら、寝息をたてるミラを見つめた。