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「やっと着いた・・・」

サマンガン樹海で何とかジャオを撒き、ようやくカラハ・シャールに着いた。
私の呟きにジュードが振り返る。

「フィオ、カラハ・シャールに来たかったの?」
「ええ。前にイラート海停で目的地があるって話したでしょう?それがカラハ・シャールなのよ」
「何かあるのか?」

ミラの問いに全員が視線を向けてくる。
それに誤魔化すように苦笑した。

「少し用があって。5の鐘が過ぎる頃には合流できると思うから、それまで別行動するわ」
「うむ。わかった」

目指す場所は決まっている。早く用を済ませてしまおうと、あふれかえる雑踏の中に足を進めた。





昔の記憶を頼りに南西地区を進む。
広場とは違い、貴族や大商人の屋敷が立ち並ぶここは静かだ。
前にここを訪れたのは・・・父が健在だったときだから5年ほど前だろうか。
あの時と変わらずこの街は賑わいを見せている。
ふと、目的の場所までもうすぐというところで馬の鳴き声が聞こえ、塀に体を隠してそこを覗き見る。
そこにはまさに目的の場所であった領主邸の前に、一台の豪奢な馬車とラ・シュガルの親衛隊の兵の姿があった。

「まさか・・・」

それらに一瞬にして状況を把握する。
おそらく間違いない。
ラ・シュガル王が、あの屋敷にいる。
しかしこれでは入ることもできないし、何より目的の人物に会うこともできない。
王がシャール卿をよく思っていないことは知っている。
ならばなぜこんなところに?何の目的で?
戦争の気がじわじわと高まる中、徴兵でもしに来たのだろうか。

「・・・・・」

しかしいくら考えたところで答えは出るはずもない。
ここで見つかるのも厄介だし仕方なく出直すことにし、情報収集のために広場へと戻ることにした。



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