「まさかこの歳で、こんな術が使えるとはね」
魔物を倒し、アルヴィンがエリーゼを褒める。
アルヴィンの言葉通り、エリーゼの術は子供が使うとはとても思えないくらい強力なものだった。
当の本人はジュードに宥められているが、それは恐怖からくる涙ではなかったらしい。
「仲よくしてよー。友達は仲よしがいいんだよー!」
「わたし・・・邪魔にならないようにするから・・・だから・・・」
ミラとジュードが自分のせいで喧嘩していると思い、それを悲しんでいたようだ。
エリーゼの背に手を置くと服の裾をぎゅっと握られる。
「だってさ、エリーゼに免じて許してやれば?」
「免じるも何も、別に私は怒ってなどいないが・・・」
確かに怒ってはいないのだろう。
が、しかしこんな幼い子にまで気を遣わせるのはいかがなものか。
「ミラ」
観念したら?という意味を込めて呼ぶと、小さく笑った。
「いつの間にか私が悪者か・・・。ふふ、わかったよ」
「ほれ、エリーゼに言うことあるだろ?」
アルヴィンに急かされ、ジュードは眉尻を下げる。
「心配かけちゃってたんだね。エリーゼ、ありがとう」
「エリーゼがいれば頼もしいわ。ね、ミラ」
私の言葉にミラが小さく頷く。
「ありがとう、エリーゼ。これからはアテにするぞ」
エリーゼは嬉しそうに笑った。
これでもう空気が悪くなることはないだろう。
エリーゼの前にしゃがみ込み、頭を撫でる。
「怪我はなかったのよね?」
「はい・・・」
「なら、よかったわ」
確認のために問えばエリーゼは左手にしがみ付くように握ってくる。
どうやら懐いてくれているらしく、しばらくそのままの状態で樹海を進むのだった。