16

ハ・ミルに着いてすぐに飛び込んできたのは村人たちの喧騒だった。
以前村を出る時に助けてくれた少女が、村人たちに石を投げられ罵倒されている。
ジュードが村人の腕を掴み石を投げるのを止めると、私たちの存在に気付き矛先はこちらへと変わった。

「お前たちのせいでこっちは散々な目じゃ!」
「・・・ラ・シュガル軍にやられたか」
「やつあたりかよ、大人げないな」
「・・・・」

そうこぼすアルヴィンを押しのけ、村長の前へ出る。
そして深く頭を下げた。

「本当に申し訳ありません」
「フィオ?!」

驚きに満ちた声でジュードに名前を呼ばれる。

「ですが、あの少女を虐げるのは間違いです。ラ・シュガル軍が狙っていたのは私たち。あの子が何をしたという訳ではないはず」

村人はたちは図星をつかれたと言わんばかりに押し黙ってしまう。
彼らもわかっているのだ、少女を虐げたところで事実は何も変わらないのだということを。
でも閉鎖された村で生きるにはこういうやり方で身を寄せ合うしかすべがないのだろう。
村長は苦しげに吐き捨てた。

「よ、よそ者に関わるとロクなことにならん!すぐに出て行け!」

散り散りに去っていく村人にまぎれて少女が走っていってしまう。
ジュードが後を追おうとしているのに気付いたのか「長くとどまるつもりはない」とミラは言った。
ミラの言葉にジュードは嬉しそうに返事を返し、少女の後を追って行った。
その背中を見送っていると、ふとミラが私のほうに目を向ける。

「何故、頭を下げたのだ?」

意味が分からない、とミラの表情が語っている。

「・・・ここに兵を呼んでしまったのは私たちのせいよ。それを知っていながら放置したのも私たち。・・・私たちにまったく責任がないわけじゃないわ」

人と人が争う世界に安寧なんてありはしない。

(だから、早く――)



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