キジル海幕に差し掛かると、ミラは立ち止まって考える素振りを見せた。
「どうかしたの?」
「イル・ファンへ船で行けぬ場合はどうするか考えていたんだ」
「そうね・・・」
ア・ジュールは山に囲まれた地だと聞いた。
旅に慣れていない私たちでは、そこを越えるのに相当な苦労が必要だろうし・・・。
そんな思案をしていると、突然声がかかる。
「山脈越えは難しいから、ア・ジュールからの陸路の線はないだろうなぁ」
後ろから聞こえてきた声は、先ほど別れたはずのアルヴィンのものだった。
「アルヴィン!?」
「サマンガン海底からカラハ・シャール方面になるんじゃないか?」
「どうしたの?一体」
「巫女どのに頼まれてね」
アルヴィンが貨幣の入った袋を懐から取り出して見せる。
(・・・?)
その言葉に首を傾げる。
ミラとジュードは心強いと歓迎しているが、さっきまで一緒に行くと強く進言していたイバルが訳も分からない他人に護衛を頼むだろうか?
「フィオも、またよろしくな」
「ええ・・・」
彼にどんな意図があるにしろ今は気にするべきじゃない、か。
そう結論付けて、歩き出した三人の背中を追った。