13
 
村の先の参道を進んだところにミラの社は静かに佇んでいた。
四大精霊を再召喚する儀式を行ったが、なぜか失敗に終わってしまう。
途中、ミラがニ・アケリアで行方を尋ねていた巫女のイバルが現れ、話し合いの結果四大精霊はクルスニクの槍に囚われてしまったのでは?という結論に至った。


「フィオは戻らないの?」

ミラに追い出される形で村に戻っていくイバルとアルヴィンの背を見送り、社の外でミラを待とうと柱に寄りかかる。
するとそれに気付いたジュードにそう問いかけられた。

「ええ。私はミラと手を組んだんだもの。ここで待つわ」
「・・・ねえ、フィオの目的って、何?」

ジュードの目は揺れており悩んでいることが分かる。
助けてあげたいとは思うが、だからと言って私の目的を話すことはできない。
それではここまで皆に黙っていた意味がないし、何より目的を果たすのに必ず弊害となる。
フィオは黙って目を閉じた。

「ごめんなさい、話せないわ」
「そっか・・・」
「・・・ニ・アケリアに残ることで、悩んでるんでしょう?」

私の言葉にジュードは驚いたようで、目を見開いた。

「ミラにその話をされたとき、ずっと生返事だったじゃない」
「そう、だった?」
「・・・ニ・アケリアに残るかどうか決めるのはあなた自身よ。前にも言ったけれど、自分自身が納得しなきゃ意味がない。だから今は、あなたにできること、あなたがしたいことをやればいいんじゃないかしら」
「なすべきこと・・・」

そんな話をしていると扉の開く音が聞こえて、ミラが社から出て来た。

「まだ村に戻ってなかったのか」
「ええ、ここであなたを待ってたの」
「ふむ。では、これから村の者にジュードのことを頼みに行くとしよう」
「待って。ミラ、フィオ」

ミラに続いて歩き出そうとするとジュードに呼び止められる。
ジュードは言いにくそうに体を揺らした。

「二人は・・・これからどうするの?クルスニクの槍を壊しに、イル・ファンに戻るの?」
「ああ。四大のことと、あの場にいたマナを吸い出された人間たちを考えると、クルスニクの槍とは、マナを集めて使用される兵器なのだろう」
「今すぐには使われることはないでしょうけど、人からマナを確保する活動は続くでしょうね」

多くの民が犠牲になる。それだけは何としても避けなければ。
ミラが頷くのを見て、ジュードは考えるように俯く。

「それ、二人でやるの?」
「回りくどいぞ、ジュード。何が言いたい?」
「・・・ミラとフィオって、どうしてそんなに強いのかなって」
「強い、か。考えたこともないな。私たちにはなすべきことがある。それを完遂するために、行動しているだけなのだから」
「で、でも今の力で・・・。死んじゃうかもしれないのに」
「そうね。でも他の誰かが動くのを待ってるだけじゃ未来はつかめないもの。これは、自分の意志で決めたことよ」

私たちがそう返すと、ジュードはやっぱり強いよと呟く。
自分のことを強いなんて思ったことはないが、そう見えているのなら嬉しいことだ。

「ふむ、納得したのか?では村に・・・」
「ミラ、フィオ。僕も行っていいかな、一緒に」
「・・・君は、私に関わって普通の生活を失っただろう?後悔していたのではないのか?」
「うん・・・。ホント言うと少し。でも、いくら後悔したって戻れないものは戻れない・・・。だったら、今の僕の力でもできること・・・二人の手伝いをしようかなって」

今度はこちらが驚く番のようで、目を見開く。
さっきの会話が影響しているのかはわからないが、まさかジュードがついて行きたいと言い出すとは思わなかったのだ。
ミラがふっと笑うのを切っ掛けに私も笑みがこぼれた。

「君は本当にお節介だな」
「ふふ、本当ね」
「そ、そうかな」

本当に、どこまでも底抜けに優しくて逆に心配になってしまう。
そうして私たちはニ・アケリアに戻ろうとミラに促されるまま歩き出した。



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