10

大分進んだところでアルヴィンが「ちょっと休憩」と言ったことにより少し休憩を取ることになった。
岩場にしゃがんで水に触れるとひんやりとして気持ちがいい。
足もつけたいが、靴を脱いでしまうといざ戦いになったときに困ってしまうので気持ちだけに留めておく。

「アルヴィンって、結構気を遣ってるんだね」
「ま、無理に気持ちを切り替えようとしてるお前さんが気になったのは確かだ」
「・・・無理してるように見えちゃったんだ」
「そんな顔で何を言ってるの」

ジュードの眉間を指でつつくと、気まずそうにそこを押さえる。

「でも、ホントに大丈夫だよ。僕、難しく考えないようにするの得意な方だから」
「そっか」

アルヴィンが笑って答える。
ふと、滝の音に混じって小さなうめき声が聞こえてきた。
急いで声のした場所に向かうと術で捕えられたミラと術者であろう女性の姿があった。

「誰?」
「・・・今は、この娘にご執心なのかしら?」

ジュードの問いには答えず、相手はアルヴィンを見て話す。

「放してくれよ。どんな用かは知らないが、彼女、俺の大事な雇い主なんだ」
「近づかないで。どうなるか、わからないわよ」

ミラが捕まっている以上、下手な手出しは出来ない。
相手は術者のようだから私の早さに追い付かれることはないかもしれないけれど、それにしたって隙が欲しい。
せめて一瞬でも術者の目を他に向けられたら・・・!
考えているところに、ジュードから小さく声がかかった。

「アルヴィン、フィオ、そのまま聞いて」

言われた通り、動かないままジュードの言葉に耳を傾ける。

「右上の岩、撃てる?もしかしたら、ミラを助けられるかもしれない」

その方向に目をやると、一部だけ起伏している岩がある。
岩を落とすつもりなのか、それとも目を逸らすだけの猫騙しなのか。
ジュードの考えは分からないが、今はそれに従おう。

「すぐ撃っていいのか?」
「え?」
「大丈夫、隙があれば私が行けるわ」
「うん」

ジュードと私の返事を受けてアルヴィンは岩に向けて銃を撃った。
それと同時に跳躍する。
岩の正体は擬態していた大きな魔物だった。
それが落ちるのを視界の隅に入れながら、よそ見をした術者の横腹を思いっきり蹴ると術者は滝壺の急流に飲み込まれていく。
解放されたミラと共に素早く体制を整えた。

「まったく。乱暴だな」
「そう言うなって。とにかく、こいつを片付けようぜ」
「ええ!」
「来るよ!」



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