08

ふわりと甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
イラート間道を進んだ先にある村には甘い匂いが充満していた。

「おやまぁ、こんな村にお客さんとは珍しい」

辺りを見回していると、一人の老婆が声をかけてきた。
この村の村長をしているらしく、ニ・アケリアの所在を聞いたところ、キジル海幕の先にあると聞いたことがあるという。
起伏の激しい地らしく、休むことになったのだが村に宿がないため村長の家で休ませてもらう事となった。




翌朝、ふと村の入口が騒がしく外に出ると村人とラ・シュガル兵が小競り合いを起こしていた。
手すりを越えて下に降り、外にいたらしいミラやジュード、騒ぎを聞きつけたのであろうアルヴィンも合流する。

「どうやら、これ以上のんびりしてるわけにもいかなそうだ」
「二人を追ってきたわけではないと思うけれど・・・。見つかる前に村を出た方がよさそうね」
「ああ。村の西に出口があった。キジル海幕はあっちだろうな」

アルヴィンの言葉に頷いて駆け出す。
しかし村の出口にはすでに兵士によって封鎖されていた。
どうする、という問いにミラは強行突破するという。

「そうね。二人なら顔を見られずにいけるかもしれないわ」
「僕もそう思う」
「短い作戦会議だこと」

伏せていた状態から立ち上がると、背後に気配がしてジュードと同時に振り返る。

「あ、あの・・・」

そこにはぬいぐるみを抱えた幼い少女が立っていた。

「え、えと・・・なにしてる・・・んですか?」
「うむ。邪魔な兵士をどうするか考えていたことろだ」
「・・・直球だね」

ミラの返答にため息をつきたくなるのを抑える。

「あの人たち、邪魔・・・なんですね」

少女がこぼすように口を開いた。
すると、抱えていたぬいぐるみが突然動き出し、兵士を撹乱するように飛び回る。

「これは・・・」
「どうなってるの?ぬいぐるみが?」

困惑しているのもつかの間、村の方から大きな男が歩いてきた。

「ここで何をしておる。こら、娘っ子。小屋を出てはならんというに」

少女の知り合いだろうか。
しかし出口のラ・シュガル兵に気が付くとそちらへ駆けて行く。

「あ・・・行っちゃった・・・」

ジュードの声に振り返れば、女の子は村の方へ走って行ってしまっていた。
兵をのして戻ってきた大男に少女の所在を聞かれ、村へ戻ったと素直に言うと慌てた様子で少女を追って行った。



PREV LIST NEXT


: TOP :
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -