ドサッ
と物が落ちる音がして後ろを振り返る。
「なまえ?」
「……………」
だけど様子がおかしい。
家に入ってきて荷物を床に落とした状態のまま、微動だにしない。
いつもの元気な彼女は微塵も感じさせなかった。
「なまえ?どうかした?」
なまえに近付いてその小さな肩に手を置く。
「…なまえ?」
すると。
「うわ、あっ!」
なまえが首に飛び付いてきた。
とっさに支えきれず、しりもちをついて倒れる。
なおもなまえはだまったままだ。
文句のひとつでも言ってやろうと口を開きかけたら、
「……ぐすっ」
なまえが小さく肩を震わせた。
「なまえ?」
「り、んく、ぅ」
嗚咽をもらすなまえの背中をゆるゆると撫でる。
ぎゅう、と抱き着く力が強まった。
「どうした?なまえ」
「も、やだぁ…っ!わた、し…!」
「うん」
ぽん、ぽん、赤子をあやすように一定のリズムでゆるくたたいてやる。
なまえの嗚咽がだんだん泣き声に変わってゆくことに、少し穏やかな気持ちになった。
ここへおいで
(俺の胸で泣いてくれるのなら)(二度と離さないから)