「ねー」

先ほどから剣やら盾やら、旅に必要なものの手入れをしているリンクに声をかける。

「んー?」

するとふたつの背中越しに返事が飛んできた。

「いつ行くの」

背中の体温はすごく安心する。
けれど自分からした問いかけに少し気分が沈んでしまった。


突然いなくなったと思えば何でもないようにふらりと村に帰ってきてまた旅に出て、更にまた帰ってきたら「俺勇者になったんだ」のセリフ。
最初聞いたときはああ手先も器用でけっこう何でもすいすいこなしてしまう幼馴染みもとうとう頭がおかしくなったかと思った。
実際そう言ったらチョップが頭に降りてきたんだ。
あれは地味に、いやけっこう痛かった。


「んー…、今日」

そんな勇者になった幼馴染みの言葉に脳内の回想をストップ。

「は!?きょお!?」
「うん」

さらりと私にとっての爆弾を投下するその背中にグーを叩き込んでやろうか。
でもそれってただのやつあたりだし、きっとリンクにはあまり効果はない気がする。
見かけによらずちょっとむきむきだし。

結局その考えを打ち消し、ささやかな仕返しとしてリンクの背中に体重をかけた。
これで重いと言われたらホントに殴ろう。

「なんだよ?」
「べつに!勇者さまは大変だなあって思って!」

笑みを含んだ声で言われてついつっけんどんな言葉を返す。
するとくすくすと背中に振動が伝わってきた。

「なに」
「いや?お前ってわかりやすいなあって思って」

伝わる振動に私の機嫌はどんどん下がっていく。
それでも背中の体温から離れようとは思わない。
振動がやっとおさまるとリンクが顔をこちらに向けたのがわかった。


「お前さあ、そんなに俺のことすきなの」

「は、あっ!?」


リンクの言葉に返す前に背中のぬくもりが急になくなり、どさりと後ろに倒れた。
頭の下にはリンクの足、目の前にはリンクの顔と天井。

「な、どうなの?」
「…っ!!」

驚くよりも先に羞恥で顔が赤くなった。

「ほら、白状しちまえ」










背中合わせの恋心










(あ、う、)(俺はずっとすきだったんだけど?)(!!)