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「そうだな、どこから話せばわかりやすいか」

サターンさんはそういうと、テーブルを指で二三、とんとんと叩いた。
何か考えているときの癖なのだろうか。

「……六年前。ギンガ団という団体が悪事を働いたことはまだ記憶に新しいと思います。」

「あの、サターンさん。申し訳ないのだが、私は最近までこの土地に足を踏み入れたことが無かったので、もしも時代背景がこの話に重要だと言うのなら詳しく説明していただきたい…のですが」

「はい、わかりました……なるほど、旅人だったと言うわけですね、ある程度は納得致しました。……そのギンガ団という団体は、とある目的を果たすためにエネルギー開発という名目で知名度と社会的信用、またその頭のカリスマ性により人数を増やし、ある日、ある程度の力を得たところで、ポケモン強盗に遺跡・神域の破壊、発電所の占拠などの活動を始めました。」
「……」
「しかし、世間を騒がしたその行動も気が付いてみればいつの間にか大人しくなっており……気が付けば当時のギンガ団ボスであった男が失踪を遂げ、そして然るべき責任を取ったそれまではただの団体であったギンガ団が正式に株式会社として独立したということは広く知られている通りです」

不意に、眼の端に隣の少女がうつむいたのが映った。
話を聞いていると相当大きな話のようだし、ヒカリも何か関係していたのだろうか?

「つまり…その代替わりした先の、会社として独立させた人間があなただと?」
「そうなりますね。幸いにもボスは経済界の名士としても名高い方だったので、あの方が残していったマニュアルに従っていればその先二年近くは大概の問題は回避出来ました。さて、話を戻します。当時のギンガ団の活動の最終目標、あまり広くは知られてはいませんでしたが…それは新たな世界の創造にありました」

…………はあ。
なるほど。

話の規模が、今までもそれなりに大きな話だとは思っていたが…格段に跳ね上がったな…。
世界創造と来たか。なんとも…一人間としては絶対に届きそうのない…遠い話過ぎて全く現実味がついて来ない話だ。

「…まるで神の所業だな」
「ええ。よくわかりましたね」
「え?」
「ボスは、どうやら、新世界の神になりたかったようですから」
「………」

神…と来たか…。
まさか実際にそれを目的として掲げていた、とは……

「…それが正しい反応だと思いますよ。ただ、あの方はそれを掲げても後ろに人がついてくるだけのカリスマと手腕と、そしてその明晰な頭脳によって方法まで明確に弾き出していました。彼の掲げる理想は人によっては相当甘美に響き、かく言う私も彼の行動に興味を持ったことが切っ掛けでギンガ団に…」
「サターン。」「サターンさん。」
「……おっと。ありがとうございます、シロナさんにヒカリさん。少々熱を上げてしまいましたね。脱線してしまいましたが、彼はつまり、ポケモンの力を使い新しい世界を作り上げ、そこに理想郷を作りあげようとしていたのです」
「なるほど……ん?」

ん?いま、さりげなくさらりと言ったが、ポケモン…と、言ったか?
世界を新しく作る、その手段として…ポケモンを?

「まさか、天地創造なんて。ポケモンはそのようなことまで可能なのか」
「普通に考えれば無理でしょうね。しかし、伝説…おとぎ話のような存在として思われていた「創造主」たるポケモンの存在を彼は確信し、そしてそれは事実でした」

はあ、なるほど…
って、もしかして、いやもしかせずともそれは途轍もない発見なのではないか?…世界を新しく作る方法がある、なんて…

「おかしい。そんな方法があるのならもっと大きな騒ぎになっていてもおかしくない筈だ。先ほどあなたが口にしたいつの間にか大人しくなって…という風に収まりがつくのは無理なような気がするぞ。」
「そのことを知っているのは当時関わっていたごく僅かな面子に限りますから。…それに、肝心のところはボスは誰にも話していませんでしたから…例え今同じような環境をそろえたとしても、成功させることは不可能でしょう」
「…なるほど」



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