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戦う。

なんと絶望的な言葉だろうと思った。


「アンちゃん達も、沢山嫌な思いをしたと思う。今、私達は少しでも多く信頼できる仲間を探していて、だから、」
「そういうことなら。」
「え?」
「そういうことなら…お断り、させて頂きたい」
「………え?」

戦う。

なんと絶望的。
なんて絶望的で、現実味のない、言葉だろう。
まだ詳しい話も聞かない内での私の反応が信じられないのか、微かに首を傾げるヒカリを見て、罪悪感が湧かないかと聞かれれば確かにイエスと答えるのだが――それにしても、同情から行動を起こすには、あまりにもリスクが高すぎる。


「悪いな、ヒカリ。私は、もう、彼等とは……関わりたくない」
「…………」
「関わらずにいられるなら…それでいい」

戦う。
なんて非現実的。

誰と戦うのだ?ポケモンと?ポケモンと!

あんな生き物相手に、私にいったい、何が満足に出来るだろう!

そしておそらくは、きっと、また、


「#アン。あなた、随分と簡単に言うけれど、それが許される立場だと思っているの?」
「……ヒカリのトレーナーカードでこちらで療養をさせて貰っている件か?ああ、きちんと出ていかせて頂くよ。そのような厚かましい真似は到底許しがたいからな」
「それ、本気で言っているの?貴方、自分の手持ちの体の状態が…」
「シロナさん!」

自分の手持ちの?
手持ち、を持った覚えは無いのだが…勘違いされるような間柄といえば、クロか直のことだろう。

「……それは、彼の、問題です。私達が言うべきことではありません」
「ヒカリ、随分とこの子に甘いのね」
「…………だって…部外者が簡単に話して良い内容じゃ、無いです……!」
「トレーナーなのに?」
「彼女はトレーナーじゃありません!」
「本人がそのように言ったとして、事実はどうかしら。何も私が言っていることは、ボールで使役するということだけを示しているのではないということを、多くの経験を積んできた貴方ならわかるはずよ、ヒカリ」
「……………」

まて。

「……話を、聞くに…直かクロに何か大きな事があったということであってるのか?」
「…………」
「…いえ。怪我の経過も順調だし、二人ともすぐに退院出来るわ。」
「……本当に?」
「本当に、よ。」

ならば、何がなんだと言うのか。

「でも、そういうことじゃ、ないの」

そういうことじゃないのよ。
シロナさんは続けると、「もう好きにすると良いわ」と一つ、後は物思いに耽ってしまったようだった。
貴方に、好きにすると良いだなんて言われるいわれは無い――ヒカリならばともかく。
思わず反感を抱いたその時。



「大切だと思っていることにも目をそらして、ようやく気がついた時には全て手遅れでいて、その時、ようやく後悔するのに」
「……」



ぽそり。

吐き出された言葉に、その意味深な不可解さにその熱は吸いとられ、言葉を無くすことしか出来なかったのだ。


「あんなに強い薬での中毒が、あんな短期間で治るだなんて、おかしいと思わなかったのかしら」




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