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「次に、……彼女はシロナさん。君も顔は見たことはあるだろう、シンオウの元チャンピオンで今もリーグでの代表をしている」
「チャンピオン……?」

……シンオウ、は確かこの地方のこと…だったよな?
リーグ、ということは何かの戦いの優勝者であるということ……か…?

「………まさか…君は、知らない…と…」
「…知らないな」
「……………………驚いたな。正直今までどうやって生きてきていたのか知りたいぐらいだ。一体どんな環境にあればそんな知識の付き方になるんだ?代表取締役というポストを知っていてチャンピオンを知らないだなんて…」
「別に普通に過ごしてきたのだけれど…」
「ううん……」

まさか『落ちてきた』などと言うわけにも行くまい。
我ながら苦しい言い逃れだけれど先があるなら彼も切り上げてくれるだろう。

予想通り、暫く考え込んでいた彼は自分の中での空気をかえるように二三喉を鳴らすとすぐに口を開いた。


「そして、最後に、彼女――ヒカリ。現シンオウチャンピオ……ええと、そうだな。いまこのシンオウ地方で一番の力と権力を持っている人間だ」

なるほど。
チャンピオン、とはそのような意味だったのか。

「おまけに切れ者と来ているわ」
「そ、そんな…私自身はそんな大したものじゃないです、みんな…この子達が頑張ってくれたからで」

そう言って愛しげな手つきで腰のボールを撫でるヒカリ。

「まあ、まずはこの四人をしっかりと覚えて欲しい。ここにはご覧の通りまだまだ人はいるけれど、全員すぐに覚えるなんて無理に近い事だしね。取り合えずこの四人さえ覚えておけば、問題は無いと思うから」
「………待って下さい」
「うん?」


問題は無いと思うから、なんて言われたって。
貴方を含むこの方達と、私に一体何の関係が生まれると言うんだ。

頼むから分かりやすく事態を説明してくれ…

若干辟易としつつ、それでも焦らしに焦らされているその内容について言及しようとしたとき、


「………何が起きているのか。」

口を開いたのはシロナ女史だった。


「何が起きているのか、知りたい気持ちはよくわかるわ」
「なっ…」
「でも、だからこそ、順番が大切なのでしょう?余り急ぐと、大事なところを取り零しちゃうわよ」
「…………」
「では、サターン。本題に入りましょう。」
「………ええ。そうですね」



「今何が起きていて、彼女が私たちにとってどんな価値があり、私たちは対価として何を差し出すことが出来るのか」



楽しみだわ。


そう笑う彼女の目に底知れないなにかを感じて、目覚めてから初めて畏れと言うものを意識した。




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