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簡単に言うと、すぐにまた扉は閉められる事になった。

私自身は何もしなかったものの、扉を開けた瞬間何よりも私の体が真っ先に目に入ったであろう相手が、「バカ野郎着替えてるなら着替えてると言え!」ととんちんかんな事を言ってこちらが何か言う間も無く出ていってしまったからだ。

暫くは呆気に取られるものの、再び行動が出来る程度には思考力回復。
分からないことがありすぎて頭が飽和状態だけれど、先ずは服を着よう。
そう思って、再び部屋を適当に物色する。


「なぁ、タオルか何か無いか?」
「俺が知っていると思うのか。」
「それを今聞いているんだが。」
「………知るか。勝手にすれば良いだろう。」


ふい、とそっけなく顔を逸らされる。


知るか、って。
違うか違わないかを答えるだけじゃないか。意味が分からない。

顔を背けた後、先程開け放たれた扉の近くへ行くと、耳をひたりと当てて……音を確かめているのだろうか。
何かが聞こえたのか、聞こえなかったのか。それはわからないけれど、そのまま扉に寄りかかったまま、ふっ、と一息をついた。

そこで私が見ている事にあちらが気が付いたのか、ふと目が合う。わ、なんか凄く嫌な顔された。さらにフン、と鼻で笑われ顔を背けられる。

………私、何かしたか?態度悪ィ…。相当の捻くれ者だな、こいつ。


むっ、としつつも勝手にしろと言われたのを良いことに部屋を適当に漁るが何も無い。仕方無しにベッドのシーツを手に取る。

破って、胸元に巻き付け後ろで括った。ふう、一段落。
落ち着いたところで、男へと話しかける。


「なぁお前。ちょっと聞きたいんだけど、……」
「煩い、話し掛けるな筋肉女。貴様と馴れ合うつもりは毛頭無い。」

かっちん。

「…………お前なぁ。そう言う言い方は無いだろう。それに初対面の相手に対して筋肉女は酷いと思うぞ。私にはきちんと杏という名前があって、」
「合成繊維を予備動作無しにいとも容易く破く人間が何を言っている。筋肉女が違うならさしずめメスゴリラと言ったところか。」「なっ!、」

「良いから声量を落とせ。ぎゃあぎゃあと煩しい。」
「……………はい。これで良いのか。」


怒るな、私。
っていうか、さっきの男を追い掛けて行った方が手っ取り早かったような気がす……いい、過ぎたことは考えまい。

フン、と鼻息を出してこちらを見もせず扉に寄りかかった男に、考えていた質問を投げ掛ける。


「ここは、何処だ。」

「ハン、何処とはまた。ハクタイギンガビル地下実験楝に決まっているだろう。」

「何?ハクタイギンガビルチカ……?」

「………」


いきなり当たり前だとの調子で飛び出して来た聞き慣れない単語の数々に目をぱちくる。

「チカ…」
「地下実験場。」


ばっさりと叩き切る調子で訂正が入る。ふむ、地下実験場…。
それは、要するに…地下にある実験場、と言うことで合っているだろう。そんなものが家の地下にあったなんて聞いたことも無いし、大体家のアパートの名前はメゾンかきざきだ。因みに私達の住んでいた部屋は四階。

例え床が抜けて下の階に落ちたのだとして。地下に直接落ちるだなんてことあり得ない。
もし地下まで穴が貫通していたのなら、床に落ちた時点で御陀仏様だ。

にわかには信じかたいけど、やはり、家とは全く関係ない所に来てしまったと考えるのが正しいのだろうか。


「じゃあもう一つ。お前、このビルの作りは分かるのか。」
「………何故だ。」
「え?良かったら、一緒に外に出ようと思ったんだが…」
「違う。」


イラァッと言う雰囲気がぶわりと広がった。そこまで厚かましい事を行ったろうか。こいつにとっても、割といい提案だと思うのだけど。


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