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「直は?」
「隣の部屋で一人で寝るって」
「そうか」

夜。
ぱちぱちと音を立てて燃える小さな組み木を前に、しゃがみ込む人影は私とクロの二つ。
先ほどふらりと部屋を出て行った直を、恐らく咎める為に追いかけたクロが戻ってきたのはつい先ほどのことで、随分とぶすくれた顔で戻って来て無言のまま座りこんだものだから大方そんなことだろうとは考えていたもののやはりその通りだったらしい。しょうがない奴だな。軽くため息をついて水筒の水を傾けた。

「…俺も別の部屋にしようか?」
「お前がそうしたいならそうしたら良い」
「…じゃあ、アンちゃんは、どうして欲しい?」
「おかしな奴だな、私のことなど気にせず行動すればいいだろう」

私は共にいることを強制した覚えは全くない。
そう、例えば「モンスターボール」とやらでこいつの自由を奪い、束縛しているのならそれもまた違う話なのだろうけれど、私はそのような道具を用いるつもりはさらさらないし、……ああ、そういえば。

「ボール……」
「うん?」
「クロ、お前は確か以前にマスターが居たと言っていたな」
「うん、そうだね」
「その時のボールはどうしたんだ」
「ああ、」

そういうこと。そういうとクロは自らの体を縛る道具を扱うには幾分ぞんざいな仕草でポケットを漁り、小さな球状のそれを私に差し出した。

「いや、受け取りたいつもりで言ったのでは無かったけれど」
「え?」
「落として不調でも起きたら責任も取れないしな」

要するに体を電子化云々で〜という説明はどこで聞いたものだか定かではないが、それでも確かに覚えている。そんな精密機械をもし落としでもしたら具体的には分からないが大層なことにはなってしまいそうだ。
私はただ、そのような道具をよもやこの間の男に渡したままではなかろうなとの確認や、持ち主の居ないモンスターボールでも正しく機能はするものなのだろうかと思い尋ねようと思っただけだったのだ、が、

「あはは、そんなこと。大丈夫だよ…っていうか、そのつもりで話題に出したのかと思ったのに」
「そのつもり?」
「うん。アンちゃんが貰ってくれるのだと…」
「まさか!」

本当に、まさか!としか言いようが見つからない。そのような道具を用いてまで誰かに何かを強要させるような人物だと思っていたとは…いや違う。
そんな人物として取られるような態度を取っていたとは、か。

「まって。待ってアンちゃん。なんでそんなに難しい顔を…」
「いや。私にどんな非があったのかと思って…」
「ひ!?」

ひ、って、非ずのひ!?そんな押し殺した悲鳴のような声に「それが?」と返すと、瞬間、「まさか!」
すぐに切り返されておもわず面食らう。


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