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───がさっ!

「………んぅ……。」


なんだろう、この音……。

ごろり、寝返りをうちながら寝惚けた頭で思いを馳せた。ううん、ひやりとした地面の湿り気がまた、じとじととしたこの天候には心地が良いなぁ……ごろり。

がさがさ。がさっ……

「ぶいっ!ぶぶいっ!」


がさがさと近くの草むらを掻き分ける音が止み、続いて聞こえたのは何かの鳴き声とおぼしき音で、それが頭の辺りで……………。ん?

鳴き声?


「なっ、」がばっ!!と身を起こす。それに合わせて、きゅーん!と鳴いて何かがどこかへ飛んで言った物音と、ぼすっ!という落下音。


「きゅうっ!………ぶぶぶ、ぶいっ!ぶいーっ!」
「なっ、なんっ、なんっ、なんだっ!?」
「ぶぶいっ!ぶいぃーっ!」
「わっ!、と……な、なんだ、お前……?」


木陰の草むらの中に横たえていた体を起こした私の周りを、茶色い毛玉ががさがさと音を立てて走り回って、ぴょんっ!懐に飛び付いてきた。がら空きの私のお腹に、ぽすっ!収まって、すりすりと顔を寄せてくる。

あー、これもポケモンなんだろうな…。ドクケイル、ヘルガー、デルビル、ラッキー、ムックル……こいつはなんて言うのかな。首回りの白いもふもふが、すっごく気持ち良さそう。

「ぶいっ!ぶーい………」

ふんふん。くんかくんか。ふんふん。

鼻息とおぼしき空気の流れが指先に触れて、ついでにぴとぴととかすかに濡れているものが触れたり離れたり……はははっ、匂い、嗅がれてるなぁ〜……。
ぺろっ!あっ、舐めた!このやろっ、仕返ししてやる、この、うりうりっ!

「ぶぶぶぃ〜〜っ!」


きゅうきゅうと鳴いてじたばたする毛玉のお腹を指でこしょこしょとくすぐっていると、再び近くの草むらががさがさと音を立てた。

「ん?」
「イーブイ〜?ここに居るの?」
「ぶぶいーっ!!」


聞き覚えの無い女の子の声に、手の中のイーブイがぴょこんと飛び跳ねる。
そのまま毛玉が声の方へぴょんぴょんと駆け寄るのとほぼ同時に、がさっと一際大きな草木を掻き分ける音を立てながら、私と同い年位の女の子が顔を覗かせた。


「…………」
「…………」


なんとなく気まずい沈黙が降りる。イーブイと呼ばれた毛玉だけが、相変わらずぐるぐると私達の周りを走り回っている。


「………あーっ……おお…」

………えっと。その。

なんと言えばいいか。


「………おっ!、…………おはようございます、なんだぞ………?」
「……………ふっ、」

なにそれっ!。


くすりと笑った彼女の後ろで、その綺麗な黒髪が声に合わせてさらさらと揺れた。




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