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あの後、赤屋根の建物に入ってからの進行は実に素早く、無駄の無いものだった。

うぃいん、独特の作動音をくぐり抜けた私が辺りを見回すと、正面の看護師チックな服装をした女性が目を軽く見張り、こちらへ小走りでやって来る。


「失礼致しますね。」
「あ、あぁ……えっと、」
「ジョーイとお呼び下さい。ポケモンセンターは初めてのご利用ですか?」
「そう、…です。」


慣れない敬語に吃りながら頷けば、表情こそにこやかに、けれど力強く私の脇から男を手繰り寄せる。
その流れるような動作に熟練された技術を感じ、大人しく言われたまま行動し聞かれたまま答えた。この方は貴方の手持ちでしょうか。なるほど、手持ちでは無いのですね。種族はわかりますか?症状はどのような………はい。はい…なるほど……。では詳しい検査を行いますので、どうぞこちらにお掛けになってお待ちください。


部屋の奥へ連れられて行く男を見送り、所在無さげに言われたままに座っていること暫く。
先程のジョーイ…女医さん?が部屋の奥から姿を表し、こちらへと歩み寄ってきた。



「端的に申し上げると、この子…方、の症状は、自然発生的な物ではありません。明らかに、人為的な物と見られます。」
「……人為的な…。」
「はい。」


分かってはいた事だ。だって、アイツは。実験体なんて呼ばれていて、それは、つまりそういうことだろう。


「それについて、貴方にお聞きしなければいけないことがあるのですが、宜しいでしょうか。」
「ああ、何でも聞いてくれ…だ、さい。」
「ふふ、普段のお言葉遣いでよろしいですよ?」


申し訳無いんだぞ…。頭をぽりぽりして、緩んだ空気を誤魔化した。


「では。彼の症状は、特定の薬剤を過剰摂取した時の物と酷似しています。」
「薬剤を……?」
「はい。具体的に申し上げると、擬態…俗に言う擬人化をさせる為の薬ですね。」

なるほど、擬人化を……。
と、んん?

「でもっ、ポケモンは元から擬人化出来るんじゃ…なかった、のか?それなら薬なんて要らない筈じゃ…」
「擬人化についてのメカニズムにはまだ不明の点が多く、一概に決め付ける事は出来ないのですが、前提条件としてそのポケモン自身に相応の実力が備わっている事が必要とされています。」
「ん……っ、つまり……」


アイツには擬人化出来るほどの実力が備わっていないから、薬を大量投入された…と、言うこと?なのか?

「いいえ。」

私の質問をきっぱりと否定して、女医さんは続けた。


「私達の見立てでは、彼には充分擬人化するための力は付いているという事で一致しました。」


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