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そうして二人、一歩踏み出したは良かったのだけれど。


「「動くな!」」

「「!」」


いきなり飛び込んだ怒号、明らかに隣の鼻持ちならない男とは違うそれに反射的に足を止めてしまっていた。先を塞ぐように目の前に立つは、二人の男。

ほうほう、中々の面白い格好を……と見ていたら、隣の男が見るからに敵意をびしばしと飛ばしていて、やっぱりというか、なんというか。やっぱり敵なんだな、こいつらということを改めて実感した。


「なんだお前達、」
「おっと、私語は慎んで貰おうか。ハッハァ、お前らも既に待ち伏せされていたとは思って居なかったようだな。」
「さっきの着替えを怪しく思って名簿を確認しておいて良かったぜ。お前ら、まさかとは思うが俺達に見付かって逃げられるとでも思ってはいないだろうなぁ?」

芝居がかった動作でビシ!とポーズを決めて、コイツが見えるだろ?と紅白のおめでたいカラーリングなボールを見せびらかせてくる男達。因みに片方はさっきの男だったらしい。
…こいつらは私に自分の玉を見せつけて一体何が楽しいんだ?隣にしか聞こえない声でぽそぽそと話かけるとものすごく嫌な物を見る目で見られた後舌打ちされた。ん?

取り敢えず隣人の嫌な顔の原因は一旦置いとくとして。

ふむ……「逃げられると思っていないだろうな」か。
出来るんじゃないか?二人ならぶん殴って通れない事も無いと思うんだぞ?どうやら武器という武器も持っていないみたいだし…。
これ、答えていいと思うか?と隣人に尋ねると、額に手を充て天を仰いでいる。しばらくすると、好きにしろ、というように手をぺっぺっと払った。ふむ。


「なあお前達、私語を慎めとは言ってたけど、質問に答えるのはアリなのか?」
「…………ふっ、小生意気にも我々ネオギャラクティカを愚弄するか。ならば覚悟しろ、今こそアスタルテ様から頂いたポケモンを使って…」

ぐ…愚弄?

「そう感じたなら謝らせて貰う。すまなかった」
「今更謝っても遅いわ、自分の不用意な言動を後悔するがいい!ゆけ、ドクケイル、奴等をぶっ潰してしまえ!」


男がそう叫んで、手に持った玉を何か弄くると、ぴっとそこから赤い光線が伸びた。
な、……あ、あれはまさか、まさか………レーザー、ビームッ!だとッ!

くっ、現実にはあり得ないとされている夢の世界の道具とされているあの武器、まさか実用化されていたとは……丸腰どころか、あの男もの凄い一物を持っていたと言うことか…

ならばすることは一つ。


「……貴様は、何をしている…」
「お前も早く伏せろ、あいつらはビームを、」
「・・・・・・・・。ハァ……」


なっ、なんだ…その、「手遅れだ」とでも言いたげな溜め息は……!
良いぞ、別に、私の助言を聞かなくっても、お前が後で困るだけなんだからなっ、ちょっと前に再放送で見た映画の大佐みたいに、小間切れになっちまうんだから…、


「……やっぱり、そんなの良くないんだぞっ、頼むから伏せて……」
「前を見てみろ。」
「………見るから、早くっ!」「良いから見てみろと言っているだろうが…」


そこまで言われては、と私が目線を戻した瞬間、視界に飛び込んで来た物は、

困惑したじろぐ二人組と、
その手に握られた紅白の小さな玉、
そして、


「………蛾…?」

その間でふよふよと浮かぶ、限り無く蛾の特徴を誇張しデフォルメされたような、私の──あちらの、世界では有り得ない容貌を湛えた、一匹の生物であった。


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