一緒に居たかった?別れたかった?なんだろ、でもこうするより他に無かった。真波くんには寝ても覚めても自転車しかないのは練習を見ててもわかっていたし、朝だって帰りだって一分一秒惜しそうにしているのを知っていた。だからワガママは言わないようにしてた。登下校一緒じゃなくていいよとも言ったしオフの日も乗りたければ自転車乗ってきていいよとも言った。部活時間に顔見れて少し喋れて、それでいいつもりだったし、倖せだったはずなんだけど、なあ。
もともと真波くん携帯電話すら不携帯って感じだし、授業ちゃんと受けないから課題ばかりとも聞いたしいちいち電話かけるのも気がひけてしまっていた。そんなもの全部が祟ってか私にいちいち構わせるのもなんかなあってそれで、別れようって言った。
真波くんは当然驚いていたけど真波くんはインハイのメンバーになれたし私は皆のインハイ見届けたら受験だし、そう言ったら名残惜しそうな顔をしながらも了承してくれた。あまりにもさっぱりしていて多分今後顔を合わせても普通に接してくれるんだろう。それが昨日の、ことだ。


真波くんに会ったらおはようって言おうと思ってた、普通におはようって。ところがどうだ、朝練サボって授業もサボって、昼を前にしてもう帰ろうと思っていた。なのにズルズルそうさせなかったのは朝練後に福富から「朝は体調不良か?午後も休むなら一言頼むぞ」届いたメールを返しもしなかったから。
それはイコール部活に出ることだった、出なきゃ、出ても平気、わかっているつもりでも体が動かずに給水タンクから離れてくれない。頬が冷たい。
今更。寂しかったなんて言う権利なんて自分で無くしたのに、せめて別れるの嫌だって言って欲しかった、強がりが剥がれて溢れてく。
余計に出たくない気持ちが増して、部活開始時刻は近づいて、どうしようと思ったとき「ハッ!なんとかは高ェとこ好きだってな……なァにやってんだバァカ」後ろを見れば荒北が居た。

「何でここ、」
「っせ!クラスにも居ねえのに新開のヤローが見たってからナ」

答えになってない、ぼやいて黙る。聞いてもらう愚痴もない、誰が悪いわけじゃないし。それに焦れたのかあーだの唸りだし荒北の口から出たのは「真波と別れたって?」だった。フッたのどうせ自分だし、大丈夫だと思ったのにぽつ、コンクリが濡れる。聞いてるなら話すことはない、黙りを決めていれば荒北は勝手に続けて喋った。

「まあなに……福ちゃんならどんだけ短文でも必ずメール返すし、新開ならオフは必ず二人で居っだろーよ、東堂なら毎晩でも電話かかってくンだろうな」
「荒北、何言って」
「最後まで聞けっつの!……で、俺はオマエすきなんだけど」
「…えっ…ごめん、今、えっと」

荒北が私を?慰めにしちゃあ度が過ぎるんじゃないかと気持ち顔をうかがい見れば荒北は至って真面目な顔で、わけがわからなくなって返事に困ったら「泣けよ、甘えとけばいんじゃナァイの」頭を胸板に荒々しくあてて荒北の声が不思議な響き方をする。
離れる元気もないまま今だけ、とそのままで居たら荒北は「ぽっと出の一年に持ってかれた俺の気にもなってみろボケナス」ぼやく。ドキドキしないわけないだろ、ばーか。






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