練習終わったばっかで俺は疲れてるだとか、辛うじて拭いた汗もそのまま制汗剤使ってすらいないだとか、お互いジャージで色気もクソもないだとか、そんなのは毎回こいつにはどうだっていいことだった。
わかりやすい、前髪を揺らして言う「荒北、」その四文字が違う。鼻どころか耳でわかる。何かあったときのそれ。着替えるまで我慢出来ねえのか甘えため。思いつつも下がる名前の後頭部をガッと引っ付かんで腰を曲げた先に近づける俺も大概、お互い様だ。そのまま色づきもしない唇にそれを合わせて、ずらした口端で「帰りまで待てねーのか、名前チャンは?」わざと訊く。このあと他の部員も入ってくるだろう、だからわざと。
見せつけてやろうなんてなくてむしろ御免でここで相手してやって焦らしてる感覚がたまらなくいいから。そんな理由。
ぐっと顔を逸らされて自分の口に名前の頬が掠れて「ぎゅって」名前が言う。しろってことか。お望み通り、頭とは逆の手で腰の辺りも引く。
髪をガシガシまぜながら首筋にキスするついでに嗅いだら「汗くさいからやだ」なんて言う。

「俺に収まりながら言う言葉じゃないんじゃナァイ?」
「荒北の匂い。落ち着くもん」
「ハッ…お前だけじゃねーヨ」

言いながら離した名前は不安げな顔をして俺を見る逆に自分でわかるくらい口角の上がった俺の後ろでガラリとドアが開く。名前は慌てて笑顔でお疲れさまと言いに行く。どうやら東堂と新開だったらしい、そしらぬ感じでいればいつも通り名前はひょこひょこばたばたし始めた。なにしてたか隠せたつもりだろうが残念だったな、そいつら知ってんぜ。言ったらどんな顔するだろうな?毎回これが楽しくて面倒ながら彼女を構う俺も大概だと思いながら着替える、いつものこと。






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