鍵を開けようとしたら閉まった。眉間に皺が寄るのを感じながらドアを開ければ案の定だった。小綺麗なサンダルと大きな見慣れない靴が玄関にばらばら落ちている。ここはホテルじゃない。気持ちが悪い。今日はここには帰れない、朝方に帰ってシャワーだけ浴びて学校に行こう。
踵を返して元来た道を行く。街は明るさを増すばかり、私は次第に浮いていく。カラオケボックスには八時までしか居られなくこれからレイトショーでも見に行こうか、通りを歩いているときだった。右手をつかまれて「なあ、アンタ」声がかかる。
ナンパか、最悪だ。無視を決め込もうとすれば「待てって!ウチの高校だろ、なにしてんだよこんな時間に」言われて振り向くと、手をつかんでいたのは灰色のパーカーにジーンズを着た赤髪の男だった。
ウチの高校、ってことは同じ学校なんだろう。誰だかは知らないけどなぜか基山ヒロトを思い出した。あいつのような赤だった。

「制服でなにやってんの?」
「…バイト」
「禁止だろうが。アンタ隣のクラスのやつだろ」
「知らない…ていうか離してくれない」

強引に腕を引けば納得のいかなそうな口ぶりで「家出すんならダチん家にしろよ!」言って、逆を歩いて行った。なんだったのだろうか、気分が変わって私は裏を行って元来た方へ歩いていった。家の裏の公園で朝まで過ごすことにした。いつだって行く宛はなかった。






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